2019年度の特商法執行状況 延べ処分数27%増禁止命令で上積み

 2019年度(19年4月~20年3月)に行われた特定商取引法違反の行政処分は延べ件数で167件に達し、180件台でピークだった9年前に迫る勢いとなった。 件数を増やした最大の要因は、17年12月の改正特商法施行で導入された業務禁止命令。延べで63件(人)もの処分が行われ、前年度に引き続き積極的な適用が行われた。 禁止命令を除いた延べ件数も、複数の法人を使い分ける大型の悪質商法に対して国が厳しい処分を行ったことなどを背景に増やした。 処分の対象となった取引類型は前年度に続いて訪問販売が中心となり、商品・役務も引き続き住設・工事系が目立っている。
延べ処分数167件事業者数は6社減
 19年度の特商法処分の延べ総件数は167件で、18年度比は27%増(グラフ参照、「ライズ《に対する取引等停止命令は業務停止命令としてカウント、4面記事参照)。 件数ベースは36件の増加。前年度は増加率で87%増、件数で60件増だったため、やや勢いを落としたものの、件数自体は過去のピーク時に肉薄。 188件で過去最高を記録した10年度の処分数に近づいた。
 処分数を伸ばした大きな理由は、前年度より本格的に運用が始まった業務禁止命令。前年度に続き、ほとんどの業務停止命令とセットで出された。 19年度は国と都道府県で合わせて延べ63件(人)もの適用が行われ、前年度の延べ45件から4割増とした。
 さらに、業務禁止命令の件数を除いて、業務停止命令と指示の合計数を比較した場合も、19年度(104件)は前年度比24%増、件数ベースで20件の増加に。 18年度の増加率は22%増、15件増だったため、従来からの処分も積極的に行われたことが分かる。
 一方、実質の処分業者数は減少。国や都道府県あるいは都道府県同士による同時処分、業務停止命令と改善指示の同時適用、単一事業者が行う複数の取引の処分、 事実上一体となって活動していた複数の事業者の処分などのケースにおける重複カウントを除いた、実態に近い処分数は37社で、前年度の43社から6社減らした。 後で触れる、複数の法人を使い分ける大型の悪質商法処分も影響したと考えられる。
禁止命令が増加55人が対象に
 延べ処分数を押し上げる最大の要因となった業務禁止命令は、同時処分による重複カウントや複数の取引類型で禁止命令を受けたケースを除いた、実質ベースで人が対象となった。 本格的に運用が始まった前年度は42人だったため、増加率は31%、人数ベースで13人の増加とした。
 業務禁止命令は、業務停止命令を受けた事業者の対象業務の遂行において〝主導的な役割を果たしている〟人物に下せる措置。命令を受けた人物の役職・立場は、 代表取締役などの関与がほぼ明白なケースにとどまらず、前代表、取締役ではない会長、合同会社の職務執行者などが含まれた。
 代表クラス以外の人物に対する禁止命令は、健康食品電話勧誘販売の「Rarahira(ララヒラ)《の統括責任者、住宅リフォーム訪問販売の 「さくらメンテナス工房《の事業部長、排水管洗浄等訪問販売の「協和住設《の所長および主任などが見られた。 前年度は、スキューバダイビング講習アポセールスの「海翔《のケースで、役職をもたない従業員も禁止命令を受けており、事業への関与実態を踏まえた措置が今後も行われていくと見られる。 (続きは2020年4月9日号参照)