リゾネットの処分取消し請求訴訟

処分原因事実の匿名化「許される場合も」
 弁明機会付与での行政手続法違反の主張、高裁も退ける
 前号(9月3日号1面)に続き、連鎖販売取引事業者の「リゾネット」(東京都中央区)による特定商取引法行政処分の取り消し請求訴訟の第二審に関して、 同社の請求を棄却した6月15日の東京高裁判決に触れる(同社は上告せず確定、第一審は1月24日に棄却判決)。


消費者特定「かなりの確度で可能」
 同社は、19年3月29日の処分公表に先立ち行われた弁明機会の付与に関して、同年4月の東京地裁への提訴で、手続きの不備とそれによる防御権の侵害を主張。 会員が行ったとされる勧誘目的不明示や不実告知の事実関係につき、勧誘した会員や勧誘された消費者の氏名、勧誘された場所・日時等が開示されず事実関係の 確認ができなかったとして、処分庁に不利益処分の理由を示すことを義務付けた行政手続法違反を指摘していた。
 第二審でも、同社は改めて手続き不備を主張。違法行為を受けた消費者が会員登録した時期と所在地域の2つの情報から、弁明書の提出期間である 2週間程度の間に、当該の消費者とその勧誘者、公認プレゼンター(セミナーで講師役を務める会社公認の会員)を特定することの困難さを訴えていた。
 が、高裁は、行政手続法違反の主張を退けた地裁の判断を支持した。
 地裁は、消費者の登録時期は〇年△月頃=A所在地域は関東地方≠ニいった形で「相応の具体性をもって記載」されていたと指摘 (訴訟では関東地方に含まれる都県を茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡として取り扱い)。
 会員については同社が詳細な情報をもち、毎月の新規登録数は278人〜516人の間で推移していたことと合わせ、 「該当する可能性のある者をそれなりの確度をもって絞り込むことが可能」「かなりの確度をもって、消費者、勧誘者および公認プレゼンターの 組み合わせを特定することが可能」だったと判断した。
不開示理由に「返礼恐れる」消費者の要望
 弁明書の提出期限については、処分庁から最初の通知書が2月28日に出された後、同社作成の小冊子トリニティレター≠フ広告表示義務違反に関する 追加の通知書が3月25日を提出期限として出されており、最初の通知書の交付から追加の弁明書の提出期限まで「1か月弱の期間が確保されていた」として、 行政手続法が求める「相当な期間」が確保されていなかったとは言えないとした。
 高裁はこの地裁判断を支持した上で、補足説明の形で手続きの妥当性を説明。処分を行う際には、消費者から詳細に勧誘状況等を聞き取る必要があり、 そのためには「対象事業者からの返礼等を恐れる消費者の、自己のプライバシーや調査に応じたことを対象事業者に知られたくないとの 要望を尊重する必要もある」とした。
(続きは2020年9月10日号参照)