「連鎖販売ではない」、不可解な反論の狙いは「48HD」めぐる既払金返還請求訴訟

連鎖を認めた東京地裁の集団訴訟から主張を180度転換 
特商法処分の前提否定、和解案提示も報酬相殺
   ICO(新規仮想通貨公開)計画を謳った「クローバーコイン」(以下Cコイン)の連鎖販売取引事業をめぐり、 会員による既払い金返還請求訴訟が相次いでいる「48(よつば)ホールディングス」(以下48社、札幌市)。 和解に至り、一定額の返金で決着したケースがある一方、争点を同じくするにもかかわらず、なかなか返金に応じないケースも。 中でも横浜地裁で係属中の集団訴訟は、48社が連鎖販売を行っていたこと自体を否定し、特定商取引法上の返金責任がない旨を反論。 同社は3年前、消費者庁から特商法違反で行政処分を受けており、連鎖否定≠フ主張は処分の前提を崩すものとなる。不可解な主張の狙いはどこにあるのか。  

▲「48ホールディングスは、
   会員登録してクローバーコインを購入した
   消費者に送付していた書面で
   「当社のビジネスは特定商取引に関する
    法律の連鎖販売取引に該当します」と
説明していた
横浜地裁で集団訴訟 33人、36百万円請求
 Cコインを購入した会員から相次いで既払い金返還請求訴訟を起こされている48社。本紙が確認しただけでも、昨年秋の時点で東京地裁において2件、 札幌地裁で1件の訴訟が進行。一部報道によると富山地裁でも提訴が行われたという。関係筋によれば昨年12月の時点で、 48社の代理人の一人が扱ってきた訴訟の件数は少なくとも31件、参加する原告の総数は約400人に達する。
 集団訴訟が珍しくないことも特筆される。東京地裁の訴訟の1件は、会員8人が総額約2200万円の支払いを求めて昨年8月に提訴、 同12月に和解した(1月23日号1面詳報)。富山地裁の訴訟は19人が総額3300万円を請求しているという。
 3年前の17年10月、48社を処分した消費者庁の取引対策課は、訴訟や返金の状況に関して48社に報告を求めたり報告を受けたかについて、 本紙の取材に「民事の話で権限外。状況がどうこうという話はできない」「指示処分で違反原因の調査、分析等の報告を求めたが、 その報告対象から返金の状況は外れている」とした。
 このような状況の中、他の訴訟とは異なる様相を呈しているのが、昨年9月、横浜地裁で提起された集団訴訟になる。
 原告の数は33人で、請求総額は約3600万円(訴訟費用含まず)。既払い額のもっとも多い会員は約1000万円の返金を求めている。 参加人数の多さ、金額の大きさが注目されるところ、それ以上に目を見張るのが、連鎖販売事業を行っていたことを否定し、 返金の責任はないとする48社の主張だ。

▲WEBサイトのトップページでも
   「2017年9月30日をもちまして、
   連鎖販売取引は終了しております」と記載
  (9月3日時点)
「法的義務負わない」 48社従業員も「誤解」
 11月に開かれた第1回期日で、48社は請求棄却を要求。今年1月に入り、初めて具体的な主張を行った。
 ここで同社は、「単にクローバーコインというデジタルコインを原告らに販売しただけ」「連鎖販売取引を行っていた株式会社でもなく、 特定商取引法上の法的義務を負わない」「被告(=48社)が行っていた事業は、特定商取引法上の連鎖販売取引ではない」などと反論。 原告らがCコインの購入で支払った1口3万円の代金や会員登録料3000円は「連鎖販売取引における特定負担ではない」と主張する。
 連鎖販売にあたらなければ、特商法が求める義務も負わずに済む。原告は、クーリング・オフを定めた特商法40条に基づく契約解除を求めたが、 「特定商取引法上の連鎖販売取引に該当しないことから、同法に基づくクーリングオフは認められない」と突っぱねている。
 
▲横浜地裁の集団訴訟で、原告は、
   2017年10月の行政処分で消費者庁が
   認定した説明(=処分リリース下部)
   に沿って連鎖販売事業を行っていたと
   主張したが、48ホールディングスは否定
 さらに、3年前の処分の翌月に48社が会員へメールで通知した、契約解除の理由を問わずに解約・返金に応じる旨を述べた文書を根拠とした合意解除の求めにも、 「原告等を含めた会員に対して、解除理由を問わず連鎖販売取引の解除に合意したことはない」と真っ向から抗弁。
 メールは、48社の事業が連鎖販売にあたると従業員が「誤解」して送付したもので、返金の額や支払い期限を明示するものではなく、 メールの内容が合意形成の要件を充たしていたとしても「その効力は錯誤無効」と主張する。
 連鎖販売を行っていないという48社の反論。この主張を不可解と捉えざるを得ない理由の一つが、前出の東京地裁の集団訴訟では、 同社が連鎖販売を行っていたと認めていることにある。48社による連鎖販売の運営は当然の事実としてそもそも争点になっておらず、なおかつ、 原告全員について特商法40条のク・オフに基づく解約を認める旨さえ返答していた。
 東京地裁の訴訟が和解に至ったのは昨年12月。そのわずか1月後の1月、横浜地裁の訴訟では連鎖否定≠フ主張を突然に始めたことになる。
 また、3年前の処分まで、48社は、Cコインを販売する一連の取引が連鎖販売であることを前提に事業を行っていた。その証拠に、 特定利益や特定負担を詳細に説明した概要書面と契約書面を用意し、90日間の返品ルールや20日間のク・オフを記載。 会員登録してCコインを購入した消費者に送っていた文書では「当社のビジネスは特定商取引に関する法律の連鎖販売取引に該当します」と明記していた。
(続きは2020年9月17日号参照)