仮想通貨MLM 「ビットマスター」破綻の内幕

ビットコイン18億円分が行方不明≠ノコード記憶のPC故障、「落雷」「火災」で?
   人気仮想通貨ビットコイン(以下BTC)の連鎖販売取引を手掛け、資金繰りの悪化から昨年11月に破たんした「ビットマスター」(以下ビット社、鹿児島市、 西貴義代表)。破産手続きに入っていた同社の第1回債権者集会が9月9日に開かれ、杜撰だった経営の実態が明らかになってきた。 配当の行方を左右する残存BTCは取り出しができなくなっており、その経緯は依然、調査が続けられている。
報酬支払い、BTCで
 ビット社は仮想通貨の連鎖販売を13年に開始。有徳社を名乗っていた2000年代前半にも共済の連鎖販売を手掛けていた(3年前に現社名に変更)。
 仮想通貨事業は、BTC両替機の設置やBTC決済店舗の募集などを行うカナダ企業の日本代理店としてスタート。これらを募集する会員を連鎖販売で集めた。 その後、17年にカナダ企業から譲り受けたBTCの売買代行業も始めた。
 連鎖販売は、料金の異なる3コース@登録料約6万5000円と月約1万3000円の「商品セット料」 A登録料約36万円B登録料約99万円を用意(ABは2年分の商品セット料が無料)。これによる累計売上は約111億円に達し、 売買代行業でも約9億円を売り上げた。
 よくある連鎖販売との最大の違いは、一部のボーナスをBTCで支払っていたこと。会社売上の?%を一定タイトル以上の会員で分け合う シェアリングボーナスをBTCで支払ったほか、会員登録時や提携ホテル・リゾート施設の利用に応じても支払っていた。
 この仕組みによって、総額約55億円のボーナスを現金で支払ったのに加え、BTCも約9115枚を支払っていた。
BTC調達費、重荷に
 一方、BTCをもらう権利を得た会員が実際にBTCを引き出せるタイミングは、入会から1年後に縛っていた。 会員から引き出しを求められるまではビット社が預かる形を取り、その管理は関係会社のBMEX(鹿児島市)に委託していた。
 しかし、ビット社が実際に保有していたBTCの枚数は、権利をもつ会員から預かっていたBTCの枚数を大きく下回る状態が慢性的に続いていた。 そこにBTC相場の高騰が重なり、資金不足が経営を圧迫する。
 破産管財人の伊藤尚弁護士がまとめた報告書によれば、3年半前の17年4月時点における預かりBTCと保有BTCの差は約6151枚。 当時の相場で約9億円分だった。
 が、19年11月の破たん時点になると、枚数こそ6593枚と大きくは増えていないものの、相場の高騰により、 この枚数を調達するのに必要な費用は約53億円に拡大。19年2月期には、会員に引き渡すため調達したBTCの購入額と、 会員が権利を得た当時の相場との差異から、約15億円もの営業外費用を計上した。
 この間、自らBTCを獲得しようとマイニング事業への参入も試みるが失敗。最終的に約109億円という膨大な額の負債を抱え、破産申請に至った。
(続きは2020年10月1日号参照)