仮想通貨MLM 「ビットマスター」破綻の内幕

放火疑い浮上、破たん直前の事務所火災 破産管財人、疑惑解明のため警察と協調
貸金庫で厳重保管?
 9月9日の第1回債権者集会で、約1651枚のビットコイン(以下BTC)が取り出し不能に陥っていることが報告された、 破産手続き中の「ビットマスター」(以下ビット社、鹿児島市)。9月?日時点の相場で約?・5億円に相当するこのBTCを回収できるかどうかは、 債権者(ほとんどが連鎖販売取引会員)への配当見通しを左右してくる。
 取り出し不能に陥っている要因は、ビット社関係者の説明によれば、BTCの管理を委託していた関係会社BMEX(鹿児島市)の事務所付近で発生した落雷と、 その数日後にワンフロア下のビット社事務所で起きた火災。昨年8月に起きた、この落雷と火災を境にパソコンが故障し、 BTCの取り出しに必要なコードが読み出せなくなったという。その3カ月後の?月、破産手続き開始が決まった。
 が、ビット社は営業を行っていた当時、セキュリティの万全さを売りの一つに会員を募集しており、取り出し不能という事態はこれと相反する。
 一例がビット社のWEBサイト。会員向けQ&Aのページで、仮想通貨口座のハッキング対策を行っており「仮想通貨の盗難・消失の心配は一切ありません」 と述べ、顧客の資産と企業の資産は「分別管理」しているため「業績悪化によるパートナーの資産消滅は起こり得ません」と強調していた。
 ペーパーウォレット(紙に印刷した仮想通貨保管URLのセキュリティキー)は「某銀行貸金庫内にて厳重に保管しております」とも説明。 この説明が事実で、ウォレットがまだ金庫内に残っているなら、BTC取り出しの道が開ける可能性もある。
鹿児島で調査重ねる
 さらに、ビット社の事務所をほぼ全焼させた火災については、ある疑惑が浮上していることも見逃せない。当初は漏電が原因と見られていたが、 その後の調べで、警察が「放火の疑いを指摘している」(債権者集会報告書より)という。
 破産手続きを任された管財人の弁護士は、手続き開始直後より、ビット社の事務所があった鹿児島市を幾度も訪ねている。 目的は、火災現場の確認や関係資料の確保、関係者からの事情聴取。この過程で、火災の調査を担当した警察官と面談、協議した結果、 「現場の状況には、何者かによる放火を疑わせる様子がある」(同)との判断に達している。 現在進められている、損害保険会社への火災保険金の請求にも関わってくる話だ。 (続きは2020年10月8日号参照)