NMI宮澤代表に聞く「特商法・預託法検討委」報告書

販売預託商法の原則禁止、「他人事でない」 合理的根拠 要請権の拡大、「適合性原則」含む可能性も
▲ネットワークマーケティング研究所 
  宮澤 政夫代表
いわゆる「販売預託商法」の規制を検討していた消費者庁の「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」(以下検討委員会)が 8月に報告書をまとめた。同商法の原則禁止に筋道をつけただけでなく、高齢者等の脆弱な消費者≠守るためとして特商法でも幾つかの改正が予定されている。 報告書に基づく法改正がダイレクトセリング(DS)業界に及ぼす影響について、連鎖販売取引を中心に業界の課題を分析する ネットワークマーケティング研究所(横浜市)の宮澤政夫代表に聞いた。  (インタビューは9月330日にZOOMで実施)

販売預託と訪販等の複合モデル「不可」に

―――検討委員会の報告書が8月にまとまった。注目すべきと考える論点を伺いたい。
 「第一にあげられるのが預託法の改正。これが報告書の目玉と言っていい」
  ―――預託法の改正によって販売預託商法(販売を伴う預託等取引契約)を原則禁止とし、 抑止力のある法定刑や締結された契約の無効化ルールを設けるべきとされた。
 「特商法に準じた勧誘規制の強化や広告規制が預託法に求められたこともポイントになる。報告書で必要性が指摘された特定商品制の撤廃、 合理的根拠資料を求めて提出されない場合のみなし°K定の導入、業務禁止命令の導入、適格消費者団体による差止請求の規定の新設などは、 どれも特商法で実施済み」
  ―――当初は登録制を入れる案が優勢と見られたが、より厳しい原則禁止に軌道修正された。
 「登録制より原則禁止としたほうが有効≠ネので、消費者側の立場からは報告書を高く評価する意見が多いようだ。 ただ、検討委員会で委員からも指摘されていたが、禁止の要件を絞り込む際、抜け穴を作らないようにするという大事な作業が残っている。 どちらかというと、これからが本番だろう」
  ―――これらの改正がDS業界に影響を及ぼす可能性をどう考えるか。
 「全く関係ない、ということでもないと考える。検討委員会のきっかけとなった『ジャパンライフ』は、 訪問販売や連鎖販売取引で高齢者に磁器治療器を販売していた。原則禁止となれば、販売預託と訪販や連鎖販売を結び付けるようなビジネスモデルは、 法制度上も不可≠ニなる」
 
過量にみなし規定 事業者の負担重く

―――ジャ社以外にも「八葉物流」など業界発の販売預託商法が繰り返されてきた過去がある。
「決して他人事ではないまた、これを機会に、訪販や連鎖販売の事業者が通信販売なども行う複合的なビジネスモデルについて、 それぞれの取引類型に沿った法制度上の整理を社内で改めて行うべきと思う。 複数の業態にまたがって事業を行うケースが、以前と比べてかなり見られるようになってきた。それを『我が社の独自のモデル』と誇るのも良いが、 その前にコンプライアンス上の説明をきちんとできるように印刷物や規約をチェックしておいたほうがよい。悪くすると、行政の指導を受けたり、 適格消費者団体から是正の申し入れを受けたりする心配がある」
  ―――消費者被害の拡大防止を図るためとして特商法の改正も提言された。こちらで注目する論点は。
 「さきほど預託法改正の関係でも触れた、合理的根拠資料のみなし°K定について、規定の対象となる行為を『拡大すべき』と報告書の中で提言された。 これが実際に行われた場合、DS業界に影響を及ぼしてくる」
  ―――報告書では、「違反行為の立証に時間を要する」ため「過量販売等」に対象を拡大すべきとされた。
 「過量販売がみなし°K定の対象に追加された場合、(過量販売規制が導入されている取引類型の)訪販や電話勧誘販売は事業者の負担が重くなる。 だから検討委員会では、過量販売にあたらないことを証明する合理的根拠の考え方について、具体的な検討を求める意見が日本訪問販売協会や 協会理事の弁護士の委員から出た。過度な負担で判断に苦しむようなことがないようにしてほしいという要求は、業界からすれば当然だろう。 それで報告書にも『具体的な運用指針を制定し、運用の予見可能性を確保する必要がある』と盛り込まれた」
(続きは2020年10月22日号参照)