物流拠点、アムウェイが初の大規模改修

投資額16億、1日あたり2万6千件の出荷可能に2シフト制を導入、16時までの注文は翌日配送
 大規模改修を進めていた日本アムウェイ(東京都渋谷区)の物流センターがリニューアルを終え、11月16日より本格稼働を始めた。 約16億円をかけて最新鋭の設備を導入。自動化、ペーパーレス化を推し進め、物流コストや発送作業時間を大幅に抑えたほか、 2シフト制の採用で翌日配送可能な受注時間帯の後ろ倒しを図った。バーコード管理による個人情報保護への配慮も。 「10年先を見据えた物流改革」をコンセプトとし た改修のポイントを見ていく。
 
▲1997年より稼働する「八王子流通センター」
背景にカスタマー増
 日本アムウェイの物流の中核を担う「八王子流通センター」(以下センター、東京都八王子市石川町2969―1)は、同社初の自社設備として97年に竣工。 3層6階建てのセンターは約1万のパレット(荷役台)を保管可能で、健康食品等を扱う関係から一定の温度に管理された低温庫も備える。
 これまでも徐々に設備の見直しを行ってきた。17年には最新の倉庫管理システムを導入。が、「完全に設備をリニューアルするのは今回が初めて」 (櫨木哲也ディストリビューション部マネージャー)となる。近年の同社は「プライムカスタマー(愛用会員)」の急増、注文の一層の小口化、 注文数の増加が見られていたといい、これに対応する必要に迫られた。
 リニューアル後の1日あたり平均出荷数は約2万1000件。最大で約2万5000〜2万6000件の出荷を可能にしたとする。
延べ150人へ増員
 今回のリニューアルで強化された配送サービスの一つが、翌日配送に対応する注文時間帯。従来は昼12時の受注までだったが、 リニューアル後は夕方16時の受注まで拡大した。
 後ろ倒しを可能としたのは、設備の全面入れ替えに加え、作業人員のシフト体制を従来の1シフトから2シフトに移行したことが大きい。 これにより、センターの稼働時間は朝8時から夜22時〜23時に延長。1日あたりの作業人員数は、1シフト時代の70〜80人に対して、 2シフトの現在は延べ約150人に増やした。
作業環境を改善
 一方で、センター内の機械作動音の削減、照明の増加といった作業環境の改善にも着手した。労働人口の減少が進む中で人員・人材の確保は大きな課題。 このため今回のリニューアルでは、未経験者が即戦力として働きやすい環境を整えることにも重点を置いた。
▲2シフト体制にともない作業人員を2倍の約150人へ増員
 なお、現時点で、ピッキング等の作業におけるロボットの導入は「費用対効果の部分で結論が出ていない」(櫨木マネージャー)として検討の段階。 同社のように多品種の製品を扱う場合、大きさの異なるカートン(製品発送用の段ボール箱)をさばく作業はロボットにはまだ難しいという。
物流費率を5%に
 大規模改修によって物流コストも抑えた。効率化が図られたことで、売上に対する物流コストの比率は5%まで縮小。今回のリニューアルに合わせ、 西日本の物流拠点だった「神戸流通センター」の全業務をセンターに集約したこともコスト圧縮に貢献している(神戸の稼働は11月27日まで)。
 新たに導入した最新鋭の設備や管理システムは、物流システムサービス大手の豊田自動織機トヨタL&Fカンパニーの協力を得た。 同カンパニーの米国子会社は過去に米アムウェイの物流システム刷新を担当。この時の知見も活かしたことから、 現在のオペレーションは「基本的にアメリカでやっているものに近い」(櫨木マネージャー)という。
手作業→重量検品に
 リニューアルで大きく変わった点の一つが、オーダー通りの製品がピッキングされているかを確認する検品作業。従来は一個一個、人の目で確かめていたが、 新たに最新のウェイトチェッカー2台を導入した。
 まず、1台目のウェイトチェッカーでカートンのみの重量を計測。その後、ピッキング作業を経て、製品が入った状態のカートンを2台目で測り、 差し引きで導かれる正味の重量を管理システムに登録された製品の重量と比べる。問題がなければパッキングの工程に移り、 重量に誤差があれば改めて人の目で内容物を確認する。最初にカートン自体を計測するのは、夏場と冬場でカートンに含まれる水分量が変わるなどして、 重さが変わることがあるためという。
(続きは2020年12月3日号参照)