「書面交付電子化」の内幕

コロナ禍後も「対応困難」、一転して「検討進める」

「消費者庁、ノリノリだった」推進会議と事前打ち合わせ無し
 「書面交付の電子化」をめぐる混乱の発端は、その方針が突如浮上した半年前にさかのぼることができる。昨年11月、 内閣府・規制改革推進会議のワーキンググループ(以下WG)において、オンライン英会話サービスを事例として、 特定継続的役務提供(以下特益)の電子化に応じる旨を消費者庁が回答した件だ。周知の通り、同庁は発足当初から一貫して電子化に否定的な姿勢を堅持してきただけに、 特益のみとはいえ関係者の間には驚きが広がった。なぜ、電子化の解禁に踏み出すことになったのか。衆院の審議では、この疑問に迫る経緯が明らかになっている。

 新型コロナウイルス感染症の影響が全国を覆い、1度目の緊急事態宣言が出されていた昨年5月。外出自粛が要請され、リモートワークが呼びかけられる中、 政府は、対面・書面の手続きを要する法規制・制度の緊急見直しに関する要望の発出を主要経済団体に依頼した。ここで出された要望の中に、 特商法の書面交付電子化が含まれていた。
 要望したのは日本経済団体連合会。「訪問販売における申込内容・重要事項説明書類の電磁的交付の容認」と題し、 「訪問販売後、後日契約行為をスマートフォンなどで電磁的方法でお客様の申し込みの署名をいただき、お客様には電磁的方法で申込み内容を提示することで、 ペーパレス化及び契約行為のための再訪問が不要になる」と求めていた。

 しかし、消費者庁は5月18日付で「対応困難」と回答。その理由を「突然自宅等を訪問された消費者が取引条件を確認しないまま取引行為をすること等によるトラブルが多い」 「消費者保護の観点からその場で書面を交付することにより取引条件を明確にするために設けている重要な制度」「その場で書面を交付することは可能」 「コロナ感染症対応としての規制・制度の見直しとしてはなじまない」などとし、従前の見解を繰り返していた。
 その後の再検討の依頼にも、6月5日付けで同様の回答を出していた。
 一方、その約3か月後
(続きは2021年5月27日号参照)