ダイレクトセリング化粧品 多様な施策でサロン補完

リアル・デジタルの融合 新規事業との連動も

ワクチン接種も徐々に広がり、ようやく明るい兆しが見え始めている新型コロナウイルスの感染拡大。 一方で、変異ウイルスの感染力も新たな問題となっており、収束には未だ時間を要する見通しだ。コロ ナ禍のニューノーマルに対応した社会経済活動が浸透して1年半以上が経過し、消費者の購買行動にも 変化がみられる。ダイレクトセリング化粧品分野では、昨年の緊急事態宣言等によってサロンや拠点の 一時休業を余儀なくされた時期があった。現在は、感染防止対策に加え、従来型訪販の時代から培って きた「つながり」を軸としつつ、多様なツールで補完するコロナ禍で変化したユーザーの価値観を踏ま えた新たなサロンスタイルを構築する動きが活発だ
横断的なチャネル 構築と情報発

▲ユーチューブで情報発信(ポーラ)
 ダイレクトセリング 化粧品最大手ポーラ は、前期実績でコロナ 禍の影響を大きく受け たが、巻き返しを図っ ている。商品面では、 1月にリニューアル発 売したシワ改善化粧品 「リンクルショットメ ディカルセ ラム」を筆 頭に、美白 ライン「ホ ワイトショ ット」から 「ホワイト ショットス キンプロテ クターD X」、さら に最高峰ラ イン「B? A」から新 ベースメー クを投入す るなど、目 玉となるア イテムを揃 えている。 主要チャネ ルとなる 「委託販売 チャネル」 のショップ 数は、2021年12月 期第1四半期末時点で 3503店舗(前年同 期比277店舗減)、 同社のサロンの代名詞 とも言えるポーラザビ ューティーは625店 舗、同11店舗の減少。 委託販売チャネルはコ ロナ禍の中で苦戦した ものの、ポーラブラン ド売上の7割弱を占め る主要チャネル。ニュ ー ノーマルでの営業活 動が浸透し、下げ幅は 縮小し回復傾向がみら れる。
 一方、躍進している のはECチャネルで、 第1四半期の売上は1 14.9%増と大幅な 増加となった。非接触 という販売チャネルの 特性がコロナ禍のニー ズに合致した結果だ が、多くのダイレクト セリング化粧品同様、 ポーラも販売員および サロンのスタッフ、顧 客とのコミュニケーシ ョンやケア、クチコミ によってリピート顧客 を獲得し、安定した基 盤を確保してきた。コ ロナ禍で変化したニー ズに対応すべく、同社 はチャネルを横断した プラットフォームの構 築を進めており、来期 以降の完成を目指す。 現時点では、ECサイ トの利便性を高めてリ アル店舗への導線を強 化している。
 サロンでは、店舗ス タッフによるSNS等 での情報発信を行い、 地域密着色を強める取 り組みも実施している ほか、昨年はほぼ中止 となったブランド体感 イベントも感染状況を 鑑みながら再開。3月 〜4月にかけては、大 阪、神奈川(横浜)、 埼玉(大宮)でブラン ド体感イベントを開催 し、若年層向けメーク ライン「ディエムクルール」や、美白ブランド「ホワイトショット」 を紹介した。これらの イベントでも、LIN Eアカウントに登録す るとサンプルをプレゼ ントする
 さらに、ポーラブラ ンドをさらに発信する 目的で「+Desig nプロジェクト」をス タートさせた。社員有 志によって発足したも ので、公式フェイスブ ックやユーチューブチ ャンネルで日々の日常 で取り入れて実践して みたくなるコンテンツ を動画配信している。 これまでに、「食」 「企 画」 「空間」 「しつらい」 をテーマとした動画を 作成し、それぞれの分 野におけるプロフェッ ショナルをゲストに、 コロナ禍でネガティブ になりがちな心持ちに 対し、視点を変えたり 少しの工夫を凝らして 豊かにするヒントを提 案している。同社はま た、ビューティーディ レクターの活動を紹介 しポーラで働く入り口となっているイベント 「ポーラ・リクルート フォーラム」について も、オンラインで実施 している。コロナ禍で ITを用いたサービス や情報発信の重要性が 以前にも増して高まっ ていることを受け、リ アル・デジタルの融合 を 加速させる方針だ。
サロンビジネス強化と ブライダル分野進出

 シーボンでは、コロ ナ禍におけるサロン強 化策として、経験豊富 なフェイシャリストを 臨時配置したり、送料 無料キャンペーンの実 施など通販部門の強化 を図った。また、SN Sやアプリといったデ ジタルツールを活用し た動画配信を行い顧客 とのコミュニケーショ ン強化を行っている。
▲オンラインでの美容カウンセリングを導入
(シーボン)
顧客フォロー施策とし て「シーボン オンラ インビューティ・アド バイス」を導入したほ か、公式ユーチューブ で「おこもり美容」動 画を配信するなど、昨 年から継続してオンラ インを活用したフォロ ーアップを行ってい る。同社はもともと、 「ホームケア+サロン ケア」というコンセプ トで化粧品を販売し、 サロンでケアを行って きた。コロナ禍で増加 した自宅ケア需要も追 い風に、サロンを軸と しつつ、多方向で情報 発信・集客を行うこと で売上高100億円台 への回復をめざす。
 加えて、同社は6月 25日、新規事業として 「ブライダル情報サー ビス事業」を立ち上げ ることを発表した。化粧品の製造販売、アフ ターサービス提供とい った既存事業の強化と ともに、シーボンとし ての事業を多様化する ことで経営基盤の強化 を図る。ブライダル関 連事業への進出は、既 存・新規顧客のライフ ス テージに関わる分野 の開拓という狙いがあ るという。
 民間シンクタンクの 矢野経済研究所の調査 によると、2020年 のブライダル関連市場 規模は1兆2383億 円で、前年比?・9% 減と大幅な縮小が見込 まれる。コロナ禍によ って挙式のキャンセル や延期が相次いだほ か、挙式を実施しても 3密の回避を目的に招 待客を減らすなど、1 回あたりの単価が下落 しており、厳しい状況 にある。同市場は、も ともと若年人口の減少 や価値観の多様化を背 景に、2・3兆円〜2 ・5兆円で推移してき た。2021年は、ワ クチン接種の拡大など によってある程度の回 復は見込めるものの、 2019年以前の水準 に戻るのは容易ではな い。
 これに対してシーボ ンは、顧客(会員)の ほとんどが女性で、年 齢層も幅広い。ダイレ クトセリングビジネス は、顧客とのカウンセ リングを軸に「つなが り」を築くことが強み であり、同社にはその ノウハウが長年に渡っ て蓄積されている。ま た、現在は結婚する年 齢も多様化しており、 顧客のライフステージ に関わる事業としては、「ブライダル情報 サー ビス事業」は親和 性が高いとも言える。 具体的な事業内容は今 後明らかになっていく とみられるが、老舗化 粧品企業の新たなチャ ンレンジに注目したい ところだ。