社説 重要なリアルの「見える化」

  ダイレクトセリング業界では、事業の「見える化」が長年の課題となってきた。化粧品分野ではサロンを各地に構え、そこで施術やカウンセリング、販売を行うビジネスモデルが定着しているが、それも始まりは「見える化」の1つだった。ネット全盛の現在、ホームページなどで情報を公開している企業が大半だが、半面、SNSなど個人ベースではポジティブ、ネガティブ双方の情報が発信されており、1つ1つにファクトチェックが求められる時代になってしまった。別の見方をすれば、初心に帰って「リアル施策による透明性確保」がより重要性を増していると言える。
 昨年3月に30周年を迎えた化粧品企業のアシュランは、「見える施策」「見せる施策」を展開してきた先駆けだ。一例を挙げると、佐賀県鳥栖市にある「サンセールミキ鳥栖工場」では、工場内に見学用通路を設け、会員や愛用者がものづくりの現場を直に見ることができるよう設計された。設計段階から「見せる」ことを念頭に置いた工場は、現在でも稀有な存在だ。また、本社のある福岡県大野城市には、広大な敷地にさまざまな施設があり、一般に公開されているものもある。敷地内には本社、配送センター、セミナー棟、バードハウス、美術館、スパハウス、ベーカリー&カフェがあり、敷地と隣接する場所には、ハイグレードな設備とサービスが特徴の「グランドエンパイアホテル」と、会員のあらゆるニーズに応える設備が整っている。バードハウスや美術館は入場無料で、家族連れでの訪問や、学校の課外活動などにも活用されている。最近では、SNSやクチコミで好評な情報が飛び交い、利用者の増加が顕著だという。SNSは運用が難しい部分もあるが、アシュランの施設に関しては、利用者がポジティブな情報を発信しており、満足度の高い施設であることがうかがえる。
 「見せる施設」は、会員のために用意された設備であるが、同時に地域に還元・貢献する役割を担っている。前出の施設だけでなく、鹿児島県出水市にある「出水酒造」や「ホテル泉國邸」、さらには地元産の野菜や果物を栽培する「出水農産」、グァバ葉茶のペットボトルなどを製造・販売する「出水ヘルスウォータ」といった各施設も同様だ。出水市は東孝昭社長の出身地であることもあり、より地域に密着したアプローチが目立つ。「出水酒造」の焼酎づくりで使われている原材料は出水市や周辺地域で生産された「黄金千貫」を採用しているほか、「ホテル泉國邸」のレストランでも地元産の食材を使ったメニューを提供。雇用創出という側面においても、グループの設備が地域に貢献している。
 何かとクローズドなイメージを抱かれがちなダイレクトセリングだが、ネット時代の今こそ、リアルでの「見える化」が必要と言える。