社説 インボイス、争点化を

 7月20日の参院選投開票まで1カ月を切った。与野党に共通する最大の公約は物価高対策。与党は一時的な現金給付、野党は消費税減税・廃止を掲げた。他の主な公約は年金底上げ、社会保険料引き下げ、教育予算拡大、米不足を受けた農家の所得補償など。いずれも大枠として、国民の手取りを増やすことを目的に据える。
 一方、実質収入の増加が争点になっていると見た場合、公約から置き去りにされている問題がいくつかある。その代表例がインボイスだ。
 23年10月に始まったインボイスによって、消費税の納税を免除されていた年間課税売上1000万円以下の免税事業者と取引する事業者は、免税事業者に適格請求書発行事業者(課税事業者)として登録してもらい、適格請求書(インボイス)の発行を受けなければ、免税事業者からの仕入れに関して支払った消費税の仕入税額控除(全額控除)ができなくなった。
 この制度は、免税事業者の視点から見た場合、課税事業者に転換して消費税を納めるか、転換せずに受け取る報酬から消費税分を差し引かれるか――という事実上の二択を迫るもの。ダイレクトセリング業界を支える委託販売員やディストリビューターには免税事業者が少なくない。このため現場に負担を強いることになり、結果としてDS市場を更にやせ細らせる。
 制度は23年10月に始まったため、23年分の課税対象期間は3カ月で済んだ。が、2年目の24年分は12カ月が対象。課税売上が同じだった場合、単純計算で4倍の消費税を納付したか、あるいは報酬から差し引かれたことになる。
 計6年の経過措置があるため、その間に納める消費税は課税売上の2%もしくは5%で済む。しかし、措置が終われば10%の納付が必要。仮に年間の収入額が550万円だった場合、50万円の納付が求められる。非常に大きい負担だ。  本紙が23年末に実施した業界アンケートで、回答会社の4分の3は、販売員等によるインボイス番号の提供を「少数」からしか受けていないか、「ほとんど」受けていないとした。課税事業者になることが嫌気された結果とみられるが、受け取る報酬から消費税分が差し引かれ、収入を減らすことに変わりはない。
 繰り返しとなるが、参院選における各党の公約は、物価高の苦しみを軽減し、手取りを増やすことを目的としている。ならば、個人事業主の税負担を増やしているインボイスの見直しは争点の一つとなっておかしくないはず。6月22日に閉会した通常国会で、野党側が提出したガソリン税暫定税率廃止法案は、与党と折り合いがつかず廃案となった。減税が争点化していることははっきりしている。

(2025年7月3日号)