社説 若手人材の獲得こそ

 3面で報じているように、ダイレクトセリング最大手のポーラでは、最高峰ブランド「B.A」によるビジネスモデルの再構築を図ろうとしている。国内外で知名度のある「B.A」をグローバルブランドと位置づけて、新規ニーズの獲得を進める狙いだ。
 コロナ禍を機に、消費者のライフスタイルが多様化した現在、ダイレクトセリング業界では、ニーズの多様化に合わせた商品やサービスが登場している。特に、デジタル・オンライン施策の導入が急速に進み、ポーラにおいても「オンライン・オフラインの融合」を今後の柱として、ビジネスモデルの再構築を行っている。目まぐるしく変化するニーズに柔軟に対応しつつ、翻弄されない芯の強さをもつ舵取りが重要性を増している。  ダイレクトセリング化粧品分野では、長らくサロン展開が従来型訪販に代わる販売チャネルとして定着してきた。コロナ禍でその図式が大きく変わり、そこ販売員の高齢化と引退といった要素が加わったことで、ポーラの委託販売チャネルは大きく縮小した。その対策として同社が提示しているのが、デジタル・オンライン施策を導入した新しい販売網であり、商品政策としては、一般消費者にも知名度がある「B.A」や、独自の肌分析システムにもとづく「アペックス」、シワ改善ブランドとして一世を風靡した「リンクルショット」が武器となる。3ブランドともに、昨年から今年にかけてリニューアルや大型アイテムの投入を行っており、ポーラとしては、コロナ禍で落ち込んだ業績の回復に向けた本格的な動きにつなげたいところだ。
 販売チャネルのサービスを提供する「ポーラ プレミアム パス」による顧客の囲い込み、そして「B.A」などのハイブランドによるコアユーザーへの訴求によって、かつて従来型訪販からサロンビジネスへのシフトを完遂させたように、再びビジネスモデルの大規模改革を推進しているポーラ。サロンビジネスが浸透した四半世紀前と異なるのは、販売組織の高齢化が大きく進んでいることだ。裏を返せば、デジタルツールの扱いに慣れた若手のビューティーディレクターの獲得・育成が、委託販売チャネル復活のカギと言える。ポーラのEC事業においては、他業種からの人材獲得も進められており、時代の趨勢からも、ECチャネルの拡大は必然的な流れになってきている。その一方で、対面によるカウンセリング販売こそがこのビジネスの最大の強みであることには変わりなく、さまざまなチャネルでブランドに触れたユーザーを如何にリアルへ誘導するか、その仕組みづくりに苦心しているようだ。
 美容分野での競争激化、物価高騰による消費鈍化、人材獲得といったハードルに対し、ポーラがどう対峙していくのか注目される。

(2025年7月24日号)