社説 物価高、DS業界を更に圧迫

 物価高の波がダイレクトセリング業界を圧迫し続けている。多くの会社は、すでに複数回の値上げに着手。並行して、原材料費や輸送費、販売促進費等のあらゆる経費を見直してきた。打てる手は打った中、更に厳しい状況を余儀なくされている。
 本号でまとめた業界アンケート(5面)において、物価高の影響が「拡大してきた」「どちらかというと拡大してきた」と回答した企業は過半数に達した。「あまり変わらない」を含めると約9割。「影響が落ち着いてきたと感じる」を回答した企業は無かった。日々の取材で耳にする話から、各社が直面する物価高の厳しさは明々白々に感じていた。実感がアンケートで改めて裏付けられたと言いたい。
 過去1年間に商品・サービスを値上げしたという回答は半数近くに達した。また、その約3分の2は値上げによって大小のマイナスの影響を生じた旨を回答。注文の件数や頻度、単価の減少を生じたとみられる。
 ダイレクトセリング業界ではまず、22年~23年前半にかけて値上げに踏み切る企業が相次いだ。当初は、ここでひと息をついたかのように思えたが、“第2波”とでもいうべき値上げの動きが浮上している。“第1波”で思い切った値上げに着手していた企業にとっては、さらなる値上げは深刻な顧客離れを招く可能性もある中で、苦渋の判断を迫られている。
 日本訪問販売協会の毎年の調査から分かる通り、ダイレクトセリング業界の売れ筋は化粧品と健康食品。愛用者にとっては”生活必需品”と言って過言でないが、そこまで行かない顧客は食費、光熱費、家賃等を優先する。比較した場合、買い控えの対象になりやすいことがマイナス影響の背景にある。見方を変えれば、影響が想定されるとしても価格を引き上げざるを得ない状況を迫られているということが言える。  また、4分の1の企業は今後、値上げの実施を決めているか、値上げを検討していると回答。物価高の影響拡大を過半数が感じていたことと合わせて考えると、値上げの圧力が続くことを視野に入れている。
 アンケートで聞いた、コスト対策のための項目の筆頭は販売促進費およびイベント・催事費で、回答企業の6割が見直しに乗り出していた。ダイレクトセリングにおいて、期間限定のキャンペーンや表彰をともなうイベント、新規集客のためのセミナーなどのための経費は、必要不可欠と言える項目の一つ。これらを取りやめてしまうケースは、まだ稀にしか耳にしないが、予算や規模の見直しは積極的に行われていることが窺える。
 物価高は、業界だけでなく国内経済における喫緊の課題。参院選でも最大の争点となっている。政府による抜本的対策が今すぐに必要だ。

(2025年8月7日号)