社説 まだまだ続く値上げの波

 22年頃に始まった物価高騰。その波が収まらないまま、4年が過ぎようとしている。DS業界でも、値上げに踏み切る企業が引きも切らない。価格転嫁できているならまだしも、様々な経費の圧縮を余儀なくされている。顧客離れや客単価の低下を常に気にかけながら、各社が経営のかじ取りに苦慮している。
 MLM最大手の日本アムウェイは来年4月、一部製品で約8%の値上げに踏み切る。理由は、世界的物価高騰と原料・包装資材・物流費等のコスト増。同社のブランドに相応しい品質を維持・向上させていくため、苦渋の選択を迫られた。
 値上げされる製品を含むラインは、同社を代表する「ニュートリライト」「XS」「アーティストリー」「アムウェイ クィーン」など。上陸当時より根強いユーザーを生んできた台所・洗濯・掃除用洗剤の「アムウェイ ホーム」も含まれる。1アイテムあたり価格は比較的低いため、金額基準の値上げ幅は大半の品目で百円台に収まっている。しかし、日常の様々なシーンで出番の多いアイテムだけに、やはり注文の数量や頻度への影響が考えられる。
 同社の値上げは22年以降で4度目。値上げされてきたアイテムは毎回異なり、例えば今年4月に値上げされた浄水器や空気清浄機の交換フィルターは、来年の値上げの対象になっていない。ただ、人気の健食をまとめた「My朝セット」などは4月に続いての値上げ。今年値上げした製品と来年の値上げを予定する製品が混在する以上致し方ないと言えるが、ユーザーの反応を気にしない訳にはいかないだろう。
 MLM最古参の一社であるシャルレは、6月、主力のブラジャー系で6%~11%台、化粧品で4%~7%台の値上げを実施した。値上げは23年6月以来2年ぶり。前回もそうだったが、値上げ前に駆け込み需要を生じ、第1Q(4~6月)の売上は前年比で約18%増という急上昇を見せた。
 しかし、駆け込み需要はその後の反動をともなう。2年前の値上げの際は、次年度の同期の売上が約18%のマイナスとなった。最終的に通期の売上は約8%の減収で着地した。
 物価高騰は円安の影響も非常に大きい。今春に主力サプリで十数%の値上げに踏み切った中堅MLMからは、「為替のせいばかりにしても仕方ないが、実際問題として振り回された。本当に大きかった」と嘆息する声を聴いた。国内経済全体で見た場合、輸出企業は円安で潤うと言われるが、金額ベースの輸出は毎月のように減少している。原料等を輸入して国内で稼ぐDSは、さらに大きな打撃を受けている。先月に発足した新内閣は円安の打開策を打ち出せていない。今後の政策の奏功を待つ時間は多く残されていない。

(2025年11月20日号)