社説 特商法検討会 「漁夫の利」「不意打ち」警戒を
来年1月、消費者庁が「デジタル取引・特定商取引法等検討会」を立ち上げる。特商法の改正を見据えた有識者会議体は6年ぶり。デジタル取引の急速な進展に伴う取引環境の変化や、近年増加傾向にある消費者被害を踏まえて、トラブルへの効果的対応を探るという。議論はまだ始まっておらず、最終報告がまとまる時期は早くて来年秋以降だろう。ただ、前回改正の経緯を振り返った場合、報告書の作成と法案化の流れを今の内から警戒しておいていい。
特商法が最後に改正されたのは21年。「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」の報告書がたたき台となった。特商法は、定期購入トラブル対策のための通信販売規制、立入検査や業務禁止命令の強化などに結び付いた。
一方、報告書に盛り込まれたものの見送られた規制案がある。取引対策課が提唱した、合理的根拠資料要請権を過量販売に拡大するアイデアだ。取引の実態が過量販売に該当するか、その立証責任を行政から事業者に転換する狙いだった。委員会の議論は大半が販売預託商法排除に割かれ、委員だった日本訪問販売協会は慎重論を唱えたが、同課が譲らなかった。
しかし、要請権を使うと処分までの期間が大幅に短縮された――という具体データの公開を申請した本紙に対して、同課は処分の着手日・根拠請求日・処分日などを「黒塗り」して開示。最終的に、議論を深めることなく漁夫の利を得ようとする思惑は達成されなかった。
一方、委員会で一度も議論されず、報告書にもなかった仕組みが21年改正では成立した。法定書面の電子化だ。
内閣府規制改革推進会議で突如浮上。長年に渡って拒否してきた消費者庁は、その姿勢を180度転換させた。この不意打ちに業界は困惑し、消費者系団体は猛反発。成立後は、業界も巻き込んで運用ルールの策定に多大な労力が割かれたが、現在は事実上、空文化している。
さらに、電子化はクーリング・オフにも及んだが、この見直しは法案審議の段階で予想外の混乱をもたらした。条文案の通りに解釈した場合、電子メール等で行ったク・オフの〝発信主義〟が担保されないケースが考えられたからだ。
同庁審議官は〝発信主義〟を通達で明確化する旨を繰り返し答弁。しかし、通達はあくまで行政の解釈。裁判所に持ち込まれれば、〝到達主義〟を判断される可能性もある。結局、野党議員の批判に抗しきれず、条文案の修正という前代未聞の事態を生じた。
法改正を見据えたプロセスにおいて、有識者会議体の議論が非常に重要なことは言うまでもない。が、これを捻じ曲げる力学も発生してきた。その内側を監視する必要がある。
特商法が最後に改正されたのは21年。「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」の報告書がたたき台となった。特商法は、定期購入トラブル対策のための通信販売規制、立入検査や業務禁止命令の強化などに結び付いた。
一方、報告書に盛り込まれたものの見送られた規制案がある。取引対策課が提唱した、合理的根拠資料要請権を過量販売に拡大するアイデアだ。取引の実態が過量販売に該当するか、その立証責任を行政から事業者に転換する狙いだった。委員会の議論は大半が販売預託商法排除に割かれ、委員だった日本訪問販売協会は慎重論を唱えたが、同課が譲らなかった。
しかし、要請権を使うと処分までの期間が大幅に短縮された――という具体データの公開を申請した本紙に対して、同課は処分の着手日・根拠請求日・処分日などを「黒塗り」して開示。最終的に、議論を深めることなく漁夫の利を得ようとする思惑は達成されなかった。
一方、委員会で一度も議論されず、報告書にもなかった仕組みが21年改正では成立した。法定書面の電子化だ。
内閣府規制改革推進会議で突如浮上。長年に渡って拒否してきた消費者庁は、その姿勢を180度転換させた。この不意打ちに業界は困惑し、消費者系団体は猛反発。成立後は、業界も巻き込んで運用ルールの策定に多大な労力が割かれたが、現在は事実上、空文化している。
さらに、電子化はクーリング・オフにも及んだが、この見直しは法案審議の段階で予想外の混乱をもたらした。条文案の通りに解釈した場合、電子メール等で行ったク・オフの〝発信主義〟が担保されないケースが考えられたからだ。
同庁審議官は〝発信主義〟を通達で明確化する旨を繰り返し答弁。しかし、通達はあくまで行政の解釈。裁判所に持ち込まれれば、〝到達主義〟を判断される可能性もある。結局、野党議員の批判に抗しきれず、条文案の修正という前代未聞の事態を生じた。
法改正を見据えたプロセスにおいて、有識者会議体の議論が非常に重要なことは言うまでもない。が、これを捻じ曲げる力学も発生してきた。その内側を監視する必要がある。
