社説 厳しさ増す販売現場

 需要の二極化が進んでいる化粧品市場だが、2025年はその傾向がさらに強まった。ダイレクトセリング系の化粧品企業では、高機能・高付加価値ブランドの強化によって独自性を創出する取組みが相次いだが、課題も少なくない。
 例えば、ポーラが9月に満を持して発売した「B.A」は、最高峰ブランドという位置づけで、今後は同ブランドを軸に国内外でポーラブランドの拡大を進める狙いだ。2026年3月には新アイテムも投入してテコ入れを図り、ハイブランド路線をさらに強めるかたちとなる。もともと高機能・高付加価値・高価格のアイテムをクチコミとリアルの人のつながりによって販売してきたのが、ポーラをはじめとするダイレクトセリング化粧品のスタイルだ。黎明期はドア・ツー・ドアによる訪問販売も行われていたが、ホームパーティ形式などにシフト、2000年代には地域密着型のサロンがそれらに代わる顧客接点として機能してきた。
 そうしたビジネスモデルは、営業力、つまり〝売る力〟のある強力な販売組織の存在が前提となる。全盛期のダイレクトセリング化粧品市場は、まさに女性のパワーによって成長してきた。バブル崩壊やリーマンショックといった経済危機、ネット通販をはじめとする他の販売チャネルの台頭など厳しい環境に晒されながらも、コロナ禍前まではサロンが顧客接点として機能していたこともあり組織力は維持されていたが、コロナ禍によってそれが大きく崩れた。無論、コロナ危機も耐えて堅固な販売網を維持している企業も存在するが、多くの老舗では、コロナ禍を機に団塊世代のベテランが引退し、営業力が大きく後退する事態となった。その影響が直撃したのが、前出のポーラに他ならない。
 ポーラが進めている商品政策は、ハイブランドによってコアユーザーを深堀りしていく路線で、オンライン・オフラインを両軸にデータを積極的に活用した新しいビジネスモデルの構築を試みている。サロンや販売員だけでなく、ECや百貨店、化粧品専門店といった複数の接点を用意することで潜在需要にもアプローチしていく狙いだ。必然的に従来型ビジネスのウェイトは下がり、販売現場には新しいビジネスモデルに適合したスタイルが求められることになる。このビジネスの起点が人のつながりである以上、属人的要素が排除されることはないが、データを活用した新しいコミュニケーションに、特にベテラン販売員が馴染むのは容易なことではない。コロナ禍で減少したベテラン販売員がさらに引退するおそれもあるが、それを見込んで業態改革を断行しなければ将来の基盤を構築できないということだろうか。昨今の物価高が購買行動に影を落としている中、ハイブランドを売る現場の立場は厳しくなる一方だ。

(2025年12月25日号)