社説 〝リアル体験〟どう訴求

 2025年12月、ダイレクトセリング化粧品最大手のポーラが、新サロン戦略を明らかにした。それ以前から、東京・銀座にある旗艦店「ポーラ ギンザ」のリニューアルは公表されており、当初は秋にオープン予定だったものが冬にズレ込むかたちとなった。これに合わせて、1月14日には、東京・青山に新たなサロンとして「POLA SALON+AOYAMA」をオープン。両店舗はコンセプトを同じくしており、ボディメニューを含む新しいエステ「リセンスエステ」を提供するなど、新しいポーラのサロンの基軸となるものだ。
 「ポーラ ギンザ」のオープン前日に開催されたメディア向けの発表会・内覧会において、小林琢磨社長は、〝リアルならではの体験価値の進化〟を強調していた。従来型訪販の時代から、ポーラは委託販売員による訪問、カウンセリング、エステ、商品提案というサイクルで事業を展開してきた。時代が変わり、接点の多くは「ポーラ ザ ビューティー」などの店舗にシフトしたが、販売員と顧客の直接面という事業の骨格は変わらず、そこに「B.A」や「リンクルショット」、「アペックス」といった独自性の高いブランドが加わり、過去最高業績を達成するに至った。それが大きく崩れたのはコロナ禍だ。顧客接点の変化、消費者の購買行動および価値観の多様化、さらには販売員の高齢化による営業網の縮小が既存のサロンビジネスを圧迫しており、根本的な打開には至っていない。
 「ポーラ ギンザ」と「SALON+AOYAMA」の2店舗は、現状に対するポーラの1つの答えと言える。店舗の設計には世界的アーティストを起用し、さまざまな角度から五感を刺激する仕掛けが設けられている。EC全盛の時代、リアルでしか味わえない体験をどのように打ち出していくか――そこにポーラが訪販時代から培ってきた矜持があるように思える。無論、DS企業の多くがそうであるように、ポーラもまたECを含む複数のチャネルを展開し、顧客接点の拡大を図っている。そのような時代の流れの中で化粧品ブランドとしての地位を維持・強化していくには、〝リアルの体験価値〟という武器を最大限活用するほかないというわけだ。
 加えて、そのリアル体験を訴求するのは、美容に高い関心をもつコアユーザーであり、海外の富裕層である。もともと高機能・高価格帯で勝負してきたポーラだが、ハイプレステージブランドとしての施策をさらに強化していくことになる。企業の成長戦略としては理にかなっていると言える半面、既存のサロンビジネスに従事してきた販売員が取り残されることにならないか、その点は大きな懸念事項だろう。新サロン戦略の展開だけでなく、既存組織における体験価値強化も不可欠だ。

(2026年1月8日号)