社説 インボイス、即刻廃止を

 インボイス制度のダメージがダイレクトセリング業界を蝕んでいる。本紙が実施した業界アンケート(1月8日号1面)で、4分の3が経営に大小の負担を生じていると回答。委託・契約販売員やディストリビューターが免税事業者のままの場合、支払う報酬に上乗せする消費税は、経過措置を踏まえて約8%分に抑えているケースが4割に達した。企業と現場の双方を苦境に追い込んでいる。
 インボイスが始まったことで、年間課税売上1000万円以下の免税事業者と取引する企業は、事業者に課税事業者(適格請求書発行事業者)に転換してもらい、インボイス(適格請求書)の提供を受けなければ、仕入れに関して支払った消費税の全額控除(仕入税額控除)が出来なくなった。
 業界を支える委託販売員等には免税事業者が少なくない。インボイス対応のため課税事業者に転換すれば納税が必要。経過措置の間は、納める消費税は課税売上の2割もしくは5割だが、終了すれば全額に跳ね上がる。仮に年間収入額が550万円の場合、50万円の納付が要る。昨今の物価急騰を踏まえれば、その負担は尋常でない。
 アンケートで7割の企業は、自社の委託販売員等からインボイス番号の提供を受けてないか、ほとんど受けてないと回答。当然の合理的選択として、課税事業者に転換する委託販売員等は少数にとどまる実情が浮かび上がった。
 一方、企業の5割は、番号の提供がない場合、課税事業者とは異なる条件で取引していると回答。その中には、報酬の消費税を約8%分に抑えるケースが含まれ、現場は報酬の目減りを余儀なくされていた。
 他方、番号の提供がなくとも、これまで通り10%の消費税を上乗せしているという企業もいた。ただし、その場合、仕入税額控除は8割しかできない。結局、事実上の消費税増税を企業と現場のどちらが負担するかの押し付け合いでしかない。
 百害あって一利なしのインボイスに反対する声は、経済界全体で高まっている。この圧力に抗しきれず、政府は昨年12月に閣議決定した「税制改正大綱」で経過措置の内容を修正。今年10月より、仕入税額控除は5割に引き下げる予定だったが7割とし、措置終了期間を2年延長する。課税事業者が対象の経過措置は、5割に引き下げる予定だった特例を3割に抑えるという(個人事業者のみ)。
 しかし、経過措置はいずれ終わる。そもそも制度自体の複雑さが、各社の総務・経理部門を中心に大きな手間を生じさせている。本来必要のない無断なコストが生産性を下げ、インボイスによる増税効果を遥かに上回る悪影響を経済に与えている。当座逃れの見直しは意味がない。即刻の廃止を求める。

(2026年1月15日号)