トップインタビュー ヤング・リヴィング・ジャパン・インク 黄木 悠 支社長

 新型コロナウイルスの問題が収まる気配を見せない中、ヤング・リヴィング・ジャパン・インク(東京都新宿区)の業績は好調だ。 3月〜5月前半は新規登録、売上とも前年を大きく上回り、一部の製品は品切れを起こすほどの人気に。コロナ問題を受けて中止したコンベンションは、 配信イベントに切り換えて相当数の視聴を獲得した。背景には、昨年より進めてきたカスタマーベースの組織構築戦略の奏功があったという。 黄木悠支社長に話を聞いた。 (インタビューは5月14日にZOOMで実施)

配信イベント 2500ビュー

―――新型コロナウイルスの感染リスクを避けるため、3月27日〜29日に神戸国際展示場で予定していたAPACコンベンションを中止した。
 「中止を告知したのは2月21日。早めに行い、会員の理解を得ることに努めた。思ったほどの影響はなかったと言える。 会場のキャンセル費などは発生したが、ある程度のコストダメージは致し方ない」
  ―――神戸でのアナウンスを予定した製品や政策は、オンライン配信イベントで発表した。  「3月28日に行い、会員とシェアした。社内の会議室にグリーンバックを用意し、ニューススタジオ風のバーチャル演出などの工夫を凝らした。 視聴者プレゼント付きのクイズ企画なども行った」
  ―――配信に使ったメディアは。
 「YouTubeライブ。コンベンションで発表予定だった内容の一部は、4月25日にもZOOMを使ったウェビナーでシェアした。 中身は(5月1日に発売した)CBD製品のドクターセミナーなど」
  ―――反響は。
 「3月の配信のビュー数は2500以上、視聴数はアカウントで1000単位。配信を行ったのは、まだ緊急事態宣言が出る前。 数人〜10人くらいで集まって視聴した人も多かったため、リアルタイムの視聴者数はアカウントの何倍にもなる。 神戸の会場には海外からの参加を含め2000〜2500人が集まる予定だったので、それより多くの人に見てもらえた」
 
モジュール戦略にコロナ下で「さらに集中」

―――中止決定から配信まで約1カ月。準備期間としては短かったと思うが。
 「日本は今年、20周年を迎える。リボーン≠フ年と位置づけ、今のビジネス環境に適応するために外部から人材を集めて組織改革を行い、 昨年より色々な施策を練ってきた。その一つが、カスタマージャーニーに沿ったライフスタイルの提案を目的とする、 様々なコンテンツの中身やWEBメディア等の使い方の見直し。ここで準備してきたものが配信イベントで役立った」
  ―――20周年を機とした事業方針について。
 「当社はプロダクトファーストの会社であり、商品への共感を重視する。そのため、カスタマーベースのモジュール戦略を柱に据えた。 モジュールは『0』『1』『2』『3』の4ステップに分かれ、『0』は個人の力でお互いの信頼関係を築いていただく段階。 この時点ではまだヤングリヴィングは関係していない。次の『1』で商品を介した関係を構築し、『2』で会社との関わりも深めつつ、シェアリングを図る。 『3』は、シェアリングにおける自己実現とそのサポートが要となる」
  ―――モジュール戦略を推進する上でのポイントは。
 「『0』〜『3』における行動変容は、ステップ毎に必要とされるアシストを丁寧に行っていくことが大事。 そこでは、会社から発信するコンテンツの中身や見せ方、コミュニティ形成のあり方が非常に重要となる。 ITや映像のもつ力をうまく使うことがその一つで、それが配信で有効に機能した。一連の戦略は、新型コロナの問題が浮上した今も変わらないし、 どちらかと言えばさらに集中できるようになっている」
  ―――モジュール戦略の投資規模は。
 「人数でいうと、新しく獲得した人材を含め、トータルで15人のチームが動いている。社内の組織図もだいぶ変え、必要な役割を新たに用意したりした」
  ―――コロナ問題で対面、集客が難しいため、各社の間でオンライン上の企画、取り組みが増えている。御社はどうか。
 「フェイスブックで『YLチャンネル』を始めた。テレビ番組のように色々な動画コンテンツを配信している。配信サイクルは、ほぼ毎日。 地方出張などができない分、コンテンツ作りに人員を割いている」
  ―――既存セミナーのオンライン配信は。
 「会社からのメッセージやプロモーションの発表、表彰などを行う『YLJユナイツ』というミーティングを四半期に一度、主催しており、 コロナ問題の前からZOOMでライブ配信している。1月の東京開催分は会場を百数十人が訪れ、オンラインで600〜700人が視聴した。 4月の広島会場の来場数は20人ほど。密≠ノならないよう細心の注意を払った上で開催した。今年は今後、新潟と大阪での開催を予定しているが、 開催方式などは未定」
  ―――会員のオンライン上の活動には、どうのようなものがあるか。
 「色々と聞いているが、例えば、エッセンシャルオイル(以下Eオイル)を使った石鹸づくりの動画をSNSに投稿したり、 お互いにテレビ通話しながら石鹸づくりにチャレンジしたりされている。投稿した動画を見た方から製品に関する質問が来て、 新規登録につながるといったケースも少なくない」
 
▲ミント系やユーカリ系のエッセンシャルオイルが
   コロナ下で売れ行きを伸ばしている
 (写真は「ペパーミント」と「ユーカリラディアータ」)
―――コロナ問題が起きて以降の製品の売れ行きは。
 「むしろ、コロナの件が出てきてからのほうが好調の度合いが増している。心身のケアを求める方からの需要が伸びている。特に売れ行きが良いのは、 ハンドクリアジェルなどをもつ『(ハウスホールドの)ヤングシーブス』ライン。一時期は品切れを起こすほどの注文が殺到したが、 現在は安定供給をできている。米本社でも『ヤングシーブス』にフォーカスし、需要に見合った供給体制の整備を急いでいるところ」
 
オイル、CBDとも好調上期は前年上回る成長

―――Eオイルで販売数が伸びている製品は。
 「シングルだと『レイブン』や『ユーカリラディアータ』、『ペパーミント』、ブレンドは『アールシー』が好調。いずれもミント系、ユーカリ系になる。 それ以外だと『ティートゥリー』が人気を高めている。ヤングリヴィングは自社農場や多くの契約農場をもつ。Eオイルの原料調達という点で、 このことは以前に増して大きな強みになっていると考える」
  ―――5月1日に発売したCBD製品の売れ行きは。
 「4月の先行販売は目標値をクリアした。5月の発売以降も順調に出ている。当社では、今回のCBDを単なる新製品と位置づけていない。 米本社が設立された90年代、市場には質の低いEオイルが出回っていた。が、その後の(ヤングリヴィングによる)取り組みで一定のスタンダードが 形成された。CBDでもそれができると考えている」
  ―――社内の感染対策は。
 「ワークフロムホームを3月から実施している。どうしても出社が必要な場合も、オフィスに一度に6人以上が入れないルールだ。 コールセンターは時差出勤と営業時間の1時間短縮を行っている。エクスペリエンスセンターは休業中。一方で、センターで実施していた 企画のオンライン化を進めている。そのほうが全国の会員に体験してもらえる」
―――今期(20年12月期)の見通しを伺いたい。
 「直近の数字は、3月の新規登録が対前年比で40%増。4月は50%増で、5月も現時点まで50%増。売上は4月が約30%増で、 どちらも前期(19年12月期)の成長率を上回るペース。上半期は順調に終えることができるだろう。下半期は、さきほど触れたモジュール戦略に 引き続き集中し、新製品を計画する。来年2月のオーストラリアインセンティブに向けたプロモーションも3月から始まった。 通期も良い形で着地できるのではないか」