NMI宮澤代表に聞く「リモート型勧誘」

事前の適合性原則確認を、勧誘の記録≠ノも注意
▲ネットワークマーケティング研究所 
  宮澤 政夫代表
 業界に広がる「リモート型勧誘」には、どのような論点を指摘できるのか。NMIの宮澤政夫代表(=写真)に話を聞いた。
 「リモート型勧誘にはクリアすべき点が幾つもある。それを承知の上で取り組んでいく必要がある。
 まず、勧誘相手と以前に面識があるのかどうか。初めて話すという場合は、先に、お互いの紹介や信頼関係を結ぶための努力が必要。 初対面だったりする相手は勧誘すべきでない。相手の知識、経験、財産の状況に照らして、適合性原則上の問題がないことの確認も不可欠。 オンラインでは、このあたりがスルーされてしまいがちに思う。
 勧誘の前に相手の請求・同意がない広告メールを送っていないか、オプトイン規制の抵触にも気を付ける必要がある。同意を得る手段は、 電話や広告ではないメールなど色々と考えられるが、リモートでない勧誘と大きくは変わらないだろう。氏名・名称、勧誘目的、 商品・役務の種類の事前告知も、手段は様々。例えば、事前に送ったメールにこれら告知を記しておくことは一つの方法だと思う。
 リモート型勧誘に特有の注意点と考えられるのは、後々、外部に発信されると困るような『記録』を残していないか。特商法の禁止行為には不実告知、 重要事実の不告知、威迫・困惑、断定的判断の提供、迷惑勧誘などがある。誇大広告は、課徴金制度をもつ景品表示法も気にしておいたほうがよいだろう。
 テレビ会議等の形式で話すなら、そういった行為は通常の対面勧誘より『記録』されやすいはず。もっとも、正確に『記録』が残るなら、 言った言わない≠フ論争に歯止めがかかり、勧誘に問題がなかったことの証明になるとも考えられる。
 リモート型勧誘における概要書面交付の留意点は、第一に、必ず契約の締結前に渡しておくこと。特商法は、概要書面に即した説明を行うことを 前提に立てつけられている。勧誘に入る前の時点で、相手の手元に書面が届いているほうが合理的だろう。付け加えておくと、相手にPDFの書面を ダウンロードさせて、それを参考に説明を聞いてもらうことは構わないと思うが、そのことをもって交付義務を果たしたことにはならない。
 また、郵送で書面を交付する場合は、そのことを事前に相手へ一言、断っておくのが必須と考える。相手に届いた頃を見計らって、 受け取ったかどうかを電話なりメールなりで確認することも大事。特商法の要求事項ではないが、届いた書面をよく読んで理解してもらうように 伝える配慮もあったほうがよい。
 これからは、サロンやコンベンションなどの補完手段としてもリモートの手法が広まっていくだろう。ただ、その中でもリモート型勧誘はクリア すべき点が多い。コンプライアンスから外れた勧誘が出てくると、行政に注目のきっかけを与えかねない。会社のほうでリモート型勧誘を推奨するにしろ 禁じるにしろ、予めガイドラインのようなものが必要なのではないかと思う」