第68回ダイレクトセリング実施企業 売上高ランキング調査

コロナ禍で強まる不透明感  ウィズコロナ≠フビジネス構築が急務

 本紙が2020年7月に実施した「第68回ダイレクトセリング(DS)実施企業売上高ランキング調査(対象・DS=訪販・MLM企業)では、 調査企業123社(小売ベース58社、卸ベース65社)の小売ベースの売上高総額は1兆4682億4100万円となった。 前期と比較可能な116社の総売上は1兆4288億5200万円で前期比2.1%減、2019年12月の前回調査時と比べてマイナス幅が1.4ポイント広がった。 ここ数年、業態改革の成果が業界全般で見え始めていたが、新型コロナウイルスの感染拡大は各社の施策にも多大な影響を及ぼしており、不透明感が増している。 刻々と変化する状況に柔軟に対応する取り組みが求められている

前回調査時比較でマイナス幅が拡大

 回答企業を販売形態別(グラフ1参照)にみると、訪販が61社、MLMが53社となった。この2分野で回答企業の92.6%を占めた。売上ベースでは、 訪販が7374億7200万円で全体の50.2%で最大規模となり、前回調査時との比較で1.4ポイント低下。MLMの売上規模は6069億3300万円。 全体に占める割合は41.3%で、同1.1ポイントの上昇となった。
 訪販・MLMのシェアを売上ベースでみると、全体の91.5%で同0.4ポイントの低下。MLMを資本別で分類すると、国内系企業が36社、 外資系企業が17社となった。
接触型のビジネス緊急事態宣言で自粛

 小売・卸ベースの上位企業32社の販売形態別内訳は、訪販10社、MLM16社、サロン販売2社、宅配2社、宣伝講習販売1社、職域1社。 上位32社中11社が増収を達成した。
 訪販系企業ではここ数年、化粧品や健康食品、食品(乳製品)といった主力カテゴリーが堅調に推移してきたが、今回の調査では市場をけん引してきた 主要各社において減収がみられた。ダイレクトセリング化粧品最大手のポーラは、インバウンド需要の低迷や国内における新規獲得の伸び悩みが響いた。 直近の2020年12月期第1四半期では、こうした要因に加えてコロナ禍によって国内外で営業活動が大幅に制限された結果、 「POLA」ブランドの売上高は前年同期比21.7%減の250億5700万円となった。特に、ポーラ・ザビューティーやエステツイン、 ビューティーディレクターによる委託販売チャネルでは売上が同24.6%減と大きく減少。商品政策では、最高峰ブランド「B.A」を9月に大幅リニューアルし、 後半戦での盛り返しを図っていく構え。
 コロナ禍の影響は、他の訪販系上位企業にもあらわれている。ノエビアは2019年9月期決算では売上高がプラスとなったが、 直近の2020年9月期第2四半期では前年同期比5.7%減。ナリス化粧品では、2020年3月期が前期比3.5%減、エフエムジー&ミッション (旧社名・エイボン・プロダクツ)は前期横ばいとなったが、2020年上半期(1月〜6月)は15%減。シーボン(小売ベース19位)は 3月決算が同11.7%減と、いずれもマイナスとなった。
 近年、ダイレクトセリング化粧品企業の多くは、店舗やサロンを拠点としたビジネスモデルへのシフトを進めてきた。コロナ禍でサロンの臨時休業を余儀なくされ、 対面販売自体も困難であったことから、業績面においても苦境が続いた。現在は、さまざまな感染防止対策を講じながら営業活動を再開し、 オンラインカウンセリングなど非接触型の新しいサービスを導入して、ウィズコロナ℃梠繧ノ適応したビジネスモデルの構築を急ぐ。
 他の訪販系企業では、寝具販売を手がける丸八ホールディングスは、販売員確保が継続課題。日本トリムは、2020年3月期連結売上高が前期比6.2%増の 161億1600万円となったが、第4四半期においてコロナ禍の影響を受けた結果、期初計画に対して約2.4億円の未達となった。
MLMでデジタル施策の導入進

 MLM企業では、ニュースキンジャパン、ベルセレージュ本社が堅調に推移したが、日本アムウェイ、シャルレ、アシュランなどが減収で推移した。 2期連続の減収となったアムウェイは、4種類の主要製品カテゴリーの全てで売上を落とした。同社は2018年からSNS映え≠キる催しを企画し、 ブランド認知向上を図っている。一例としては、
「栄養補給食品」においてテレビCMの放映、料理イベントの後援、会員によるSNSでの情報発信などデジタル施策を進めたほか、ブランドの製品をアスリートに 提供するサポートプログラムを始めた。
 ニュースキンは、直近の2020年12月期第1四半期(1〜3月)において、売上高が前年同期比2.5%減となった。コロナ禍によって3月開催分の 会社セミナー、イベントを中止。「ブランドリプレゼンタティブ(BR)」タイトルの新規昇格・審査中の会員を対象とする「ネクストセミナー」は4月以降、 オンライン会議ツールを用いたWEB開催に切り替えた。また、4月末に開催予定だった全国大会は、予定した内容をWEBでライブ配信した。 ショールームの「エクスペリエンスセンター」は、緊急事態宣言下では臨時休業措置をとったが、現在は感染防止対策としてサービスを一部縮小した上で、 営業を行っている。
 フォーデイズは、化粧品の伸長や海外市場の拡大が寄与した一方、健康食品の苦戦などから3期連続の減収となった。コロナ禍を受けて、年度末に各種セミナー、 イベントを自粛したことなどから、新規顧客獲得の機会を減らした。今期については、売上高で300億円台を維持することを目標としている。
 ナチュラリープラスは、事業のオンラインシフトを加速させている。セミナーやトレーニングを独自の動画プラットフォームによる配信へ移行し、 海外同時配信で数千人単位の視聴を獲得した。10月の全国大会はオンラインイベントとして実施するほか、会員によるオンラインの活動も活発で、 新規登録はコロナ禍以前の水準を維持している。
高増収率企業は中小規模中心

 高増収率企業をみると、訪販が5社、MLMが5社で、比較的売上規模が小さいが目立つ。主要商品としては、 化粧品、健康食品など市場の主要商材が並んだほか、住宅リフォームもランクイン。このうち、セプテムプロダクツでは若年層や新規グループの活躍が引き続き 業績を押し上げている。組織の活性化や若年層の獲得はダイレクトセリング企業共通の課題だが、次世代を担うリーダーを育成し、 新たな組織の広がりをみせている好例と言える。
 今期見込みついては、123社中13社が明らかにしている。増収見込みは8社、横ばいは3社、減収見込みは7社となった。