「特商法・預託法検討委員会で了承」 最終報告書のポイントは? A

 消費者の脆弱性につけ込む悪質商法への対策強化を議論していた消費者庁の「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」 (委員長=河上正二東大名誉教授)が、8月19日の第6回会合で最終案を合意、正式に報告書をまとめた。出席した衛藤晟一消費者相は 「報告書の提言について早期の実現を図りたい」と表明。これにともない、来年の通常国会へ特商法と預託法それぞれの改正案が提出される見通しだ。 この中でも、最大の焦点だった販売預託商法規制と、消費者庁が推す合理的根拠要請権の拡張の2テーマのポイントを紹介する

「過量販売」を対象に、事業者へ 立証責任転換注目の「運用指針」制定、過量以外も検討

◇◇◇合理的根拠要請権の拡張◇◇◇
 特商法の合理的根拠要請権は、04年改正で導入されたみなし規定≠フ一種だ。不当勧誘・表示を行う事業者にその根拠となる資料の提出を求め、 提出された資料が営業トークや広告で示された商品・役務の性能等を裏付けないなら、不実告知を行ったと見なす。
 現行法は、要請権の行使対象を商品・役務の効能、種類、商標、製造者名、販売・必要数量に虚偽説明の疑いがあるケースに限っているが、 報告書で「過量販売等を対象に追加する必要がある」と盛り込んだ。
 目的は処分コストの軽減だ。報告書は、処分手続きにおいて「専門的又は複雑な事項が多く、違反行為の立証に時間を要する事案が見られる」と言及。 過去の会合では事務局から、時間を要した事例として、遮熱材工事で過量販売を認定した住宅リフォーム訪販の「さくらメンテナンス工房」 (19年12月、消費者庁処分)が示された。
 認定された過量販売は、2年前に自社で設置した遮熱材を撤去し、別の遮熱材の設置や断熱材の吹き付けを勧誘したというもの。 関係筋によれば同社の立ち入り検査は?年初頭といい、処分公表まで1年もかけた背景には過量認定のハードルが関係したとも考えられる。
 過量販売が要請権の行使対象となれば、これまで行政が負ってきた立証責任は事業者に移ることになる。行政は裏付け作業を軽減でき、 過量販売の認定を含む処分の公表までの期間を短縮できる。
(続きは2020年9月3日号参照)