特商法書面交付の電子化

反対の意見・声明、公表団体が計10カ所に
 紙による交付しか認められていない特定商取引法の法定書面の電磁的交付解禁案をめぐり、同案に反対か慎重な検討を求める意見書、 声明を出した団体が1月末までに10カ所に達したことが本紙のまとめで分かった(表参照)。共通する反対等の理由は、 公的な検討の場が設けられず議論が不十分なこと、書面交付の法的意義、解禁対象である6類型の電子化の必要性、新たな消費者トラブルへの懸念など。 電子化の再考やオンライン取引で生じる消費者被害防止のための規制強化を求めている。消費者庁は電子化を盛り込んだ特商法改正案を3月中に国会へ提出する。
 意見・声明を出した?団体は、@全国消費者行政ウォッチねっとA全国消費者団体連絡会B全国消費生活相談員協会 C日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会D主婦連合会E長崎県弁護士会F京都消費者契約ネットワークG日本司法書士会連合会 H埼玉弁護士会I消費者支援機構関西。BとF は適格消費者団体で、Iは特別適格消費者団体。
 意見の提出先は消費者相、消費者庁長官、消費者委員会委員長、国民生活センター理事長、内閣府規制改革推進会議議長、 成長戦略ワーキング・グループ座長となっている。
 意見・声明はいずれも、書面の電磁的交付をめぐる議論が不十分なことを指摘。特商法改正の方向性を示した、 昨年の「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」で電子化の議論がなかったことや、 電磁的交付の前提となる消費者の承諾のあり方を改正後に政省令等で示すスケジュールを批判している。
 @は「拙速な電子交付化に強く反対。十分な議論も経ず変更することには強い違和感をもつ」と意見。対象の類型でオンライン取引のトラブル実態を把握し、 「必要なら被害防止のため規制強化を検討すべき」と求めた。
 大手企業が賛助会員として加盟するCは、一般論として電子化を否定しないとしつつ、 内閣府の規制改革推進会議で電子化解禁を要請された特定継続的役務提供が特商法で規制されてきた経緯を踏まえ、 「まずは有識者、事業者、消費者等の委員で構成される検討会を早急に立ち上げ、消費者保護の観点から慎重に検討すべき」としている。
 Fは、規制改革推進会議で電子化を求められていない預託法でも、議論を行わないまま電磁的交付を可能とする方針を消費者庁が示したことに 「消費者庁の責任放棄」と述べている。
(続きは2021年2月4日号参照)