DS化粧品 コロナ禍の影響、業績面で顕著

サロンなど接触型チャネルが苦戦 ITツールやECの活用にカギ
日本国内でもワクチンの接種がいよいよ始まろうとしており、新型コロナウイルス感染拡大の収束に向けた期待感が高まりを見せている。 株価も経済活動の本格回復を見込んで高水準で推移しているが、飲食業や観光業をはじめ、実体経済と乖離した動きという指摘もあり、予断を許さない状況には変わりがない。 ダイレクトセリング業界の化粧品分野においては、感染防止対策を徹底したサロン営業やIT活用のカウンセリングなど、ウィズコロナ、 アフターコロナに対応したビジネスモデルが整いつつある。コロナ禍によって多様化した消費者ニーズを敏感に汲み取り、 従来以上に細やかに対応できる商品・サービスの提供が急務となっている。
委託販売が売上26%減に
 ポーラ・オルビスホールディングスの2020年12月期は、連結ベース売上高が前期比19.8%減の1763億1100万円と2期連続で減収となった。 損益面は、売上原価率が同0.7ポイント上昇の17.0%、販管費率が同5.6ポイント上昇の75.1%となった結果、営業利益は同55.8%減の137億5200万円、 経常利益は同58.9%減の125億7900万円、当期利益は同76.5%減の46億3200万円となった。2月8日付で通期業績の上方修正を実施し、当初よりも落ち込みが少なくなったが、 国内外で新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受ける結果となった。
 事業別の実績をみると、ポーラブランドを含むビューティケア事業は売上高が同20.1%減の1716億5800万円、営業利益が同57.1%減の129億6500万円となった。 このうち、ポーラブランドは売上高が同24.1%減の1028億8800万円、営業利益が同57.2%減の109億2700万円となった。 コロナ禍によるインバウンドおよびバイヤーの減少が続いた(インバウンド比率は約3%、前期比6ポイント低下)。また、緊急事態宣言の発出によって外出自粛傾向が強まったことや、 店舗の臨時休業および営業時間の短縮を余儀なくされたことで、「ポーラ・ザ・ビューティー(PB)」をはじめとする国内店舗事業で新規獲得が苦戦した。 海外市場では、前半戦ではコロナ禍の影響を受けたが回復は国内より早く、中国・韓国の売上は前期比60%増と好調に推移した。同社では、コロナ禍の中でオンラインによるカウンセリングを積極的に導入し、 非接触型サービスによるニーズ獲得を図った。商品政策では、最高峰シリーズ「B?A」をフルリニューアルし、計画を上回る動きを見せている模様。
 売上構成比は、委託販売チャネルが73.7%、海外が15.4%、ECが3.4%、百貨店・BEBが7.5%。各チャネルの売上伸長率は、委託販売チャネルが前期比26.8%減、海外が31.1%増、 ECが63.4%増、百貨店・BEBが56.5%減となった。コロナ禍の影響で、人との接触が多い委託販売チャネルや百貨店・BEBが苦戦した一方で、非接触のEC、 国内に比べて回復が早かった海外の伸長が目立った。
 委託販売チャネルは、ショップ数が3780店舗で前期比176店舗減、PB店舗数が636店舗で同?店舗減。購入単価は同0.1%減とほぼ横ばいだったのに対し、顧客数は同26.0%減となった。 海外店舗数は110店舗で同?店舗増と好調に推移した。
チャネル横断のデジタルプラットフォーム構築
 ポーラ・オルビスHDは2021年〜2023年までの中期経営計画を策定。コロナ禍によってトレンド変化が加速しており、消費者の価値観多様化、新たなニーズが生まれていることを踏まえ、 「ダイレクトセリング」スキンケア」「マルチブランド」を柱に、強みを進化させた成長軌道へ乗せていくとしている。このうち、ポーラブランドでは、 販売チャネルを横断したデジタルプラットフォームの構築を急ぐ。特に好調なECについては、売上を3年間で約3倍(35億円↓約100億円)を目指す。委託販売チャネルでは、 利益率の高いロイヤル顧客の育成に注力する。また、ITを活用した施策も強化し、顧客ネットワークをオンラインで拡張するほか、店舗近隣の地元客を意識したショップアカウントからの発信、 オンラインイベント、SNS投稿からのエステ誘客など、ビューティーディレクターが積極的に情報を発信する密着型の戦略を進めていく構え。 通期業績予想は、前期比7.8%増の1900億円、 営業利益が同38.2%増の190億円、経常利益が同51.0%増の190億円、当期利益が同144.0%増の113億円を見込む。
コロナ禍でも現場の活動きが活性化
 他のDS化粧品企業の直近業績も、コロナ禍の影響が顕著だが、徐々に持ち直しの兆しも見え始めている。アイビー化粧品の2021年3月期第3四半期は、 売上高が前年同期比13.2%減の21億7800万円、営業損失が3億8700万円、経常損失が4億1200万円、当期損失が3億7100万円となった。同四半期では、 強化製品である美容液「レッドパワーセラム」を中心とした実売促進を徹底し、新規顧客の拡大、顧客満足の向上を図った。しかし、同期間での追加受注が修正計画に対して乖離した。 また、美顔器をはじめとした強化製品や、第4四半期に発売を予定している新製品の先行発売は計画通りに推移し、主力スキンケア製品の売上は前年同期比7%増〜50%増となった。 その結果、第3四半期の売上高は同41.9%増となったが、第2四半期までの落込みをカバーするには至らず、累計期間では2ケタ減収を余儀なくされた。
 通期業績については、@販売会社の実売はコロナ禍の中でも増収で推移している、A販売会社の売上原価は仕入高を上回っている、B販売会社の在庫水準が一部を除きほぼ適正水準という状況を踏まえ、 コロナ禍の影響や流通在庫調整といったマイナス要因が一段落していると分析。第4四半期では、新製品として美容補助商品「スリムケアプラス」、新メークシリーズ「チュリエ」、 連続生成型電解水素水整水器「キレイオン」を投入し、需要喚起を進めていく構え。通期業績予想は、売上高が前期比3.5%減の37億円、営業利益が1億3000万円、 経常利益が同440.3%増の1億1000万円、当期利益が同163.4%増の7500万円を見込む。