タッパーウェア 石井恵三社長に聞く「方針と戦略」

デジタルと対面の融合を実現

デジタルを駆使した 顧客の開拓、販売員と の接点作りに乗り出し たタッパーウェア社。 その狙いを石井恵三社 長に聞いた。(インタ ビューはZOOMで5 月26日実施)
▲タッパーウェアブランズ・ジャパン
石井 恵三 社長

米本社が危機感

  ―――社長就任の経緯 を伺いたい。
「ヘッドハンティン グの会社から話をもら ったのが昨年11月の終 わり。そこからとんと ん拍子で決まった。社 内の背景を話すと、ア メリカの本社がコロナ 禍で大きな危機感をも ったことが大きい。売 っているのはお家時 間≠ノ非常にマッチし た商材なのに、訪問販 売やイベント販売が主 流のため販売する術 (すべ)がない。そこ で、デジタルに強くて 実績のある人材が求め られていた。日本だけ でなくマレーシアなど 多くの国でも社長が入 れ替わった」
  ―――入社の決め手は。
 「料理が好きで、キ ッチンウェアの会社で 働きたい思いを持って いた。8年ほどのアメ リカ生活を通じて、タ ッパーウェアが一般家 庭に大きなシェアを持 つことも実感してい た。大量の料理を作っ てタッパーに保管し、 電子レンジでチンする 文化が根付いていた。  また、タッパーウェ アのような総合的な会 社のトップには、営業 出身やマーケティング 出身の人物が就くのが 普通だったところ、コ ロナ禍でそれが変わっ た。私のようにずっと デジタルをやってきた 人間にとっては、ガラ スの天井がなくなった ようなもの。それで思 い切って決断した」
社内競合ではない

  ―――今後の方針を伺 いたい。
 「デジタル化を進め る目的は2つ。一つは セールスのシェアを伸 ばすこと、もう一つが コストカットで利益を 増やすこと。このうち 前者でやれることは、 売り買いだけに限らな い。集客してイベント に誘導したり、人の紹 介で買う仕組みにつな げたりと様々。よくオ ムニチャネルと言われ たりするが、デジタル と対面の融合を実現し ていくことが求められ ている」
  ―――具体的には。
 「まず、何でも良い ので、会社の直販サイ トで購入していただ く。2000円くらい のチョッパー(=みじ ん切り器)1個だけで もいい。そうやってで きたお客様を我々の販 売員のもとに導く流れ を作る。ここで気を付 けたいのは、会社がダ イレクトに集客すると 販売員から社内競合 と思われやすいが、そ うではないというこ と。
 きちんとコミュニケ ーションを図って、販 売員が行う料理教室等 のイベントに我々のお 客様を送り出すことが 目的だと理解してもら う。対面にはデジタル にない強みがある。例 えば、必要なものだけ 買うオンラインに比べ て、人が直接プッシュ できるオフラインは客 単価をあげやすい。そ れぞれの武器が活きる ように連携を図る」
 
苦手な販売員にも依頼

―――サイトでの購入 が販売員の実績となる 仕組みを用意した。
 「一人一人に固有の リンクを設けた。ソー シャルメディアなどで 広め、そのリンクを辿 ってお客様が製品を購 入すれば、マージンが 入る。若い販売員には、 毎日何度もフェイスブ ックを更新したり、と ても積極的にソーシャ ルメディアを活用して いる方もいるが、平均 的な販売員はそうでは ない。特に売上が高か ったり、お客様がたく さんいる年配の方は苦 手としていがち。が、 そういった方にも『と りあえず送ってみてほ しい』『リンクからの 購入を伝えてほしい』 とお願いしている」
  ―――サイトの強化は。
(続きは2021年6月24日号参照)