訪販協が「書面電子化」ヒアリングで 承諾取得、メールフォーム方式を提案

高齢者対応策…親族等へも電子交付、「自主規制が馴染む」

「ファイルへの記録」…解釈明確化を要請、ク・オフ起算日を左右

 2023年春〜夏の施行が見込まれている改正特定商取引法の「書面電子化」。法案段階から激しい議論を巻き起こしてきた、この運用ルールをめぐり、 消費者庁の有識者検討会で、ダイレクトセリング業界代表である日本訪問販売協会(以下訪販協、竹永美紀会長)の考え方が示された。 電磁的交付の要件となる消費者の承諾は、紙で取得させたい同庁に対して、メールフォーム方式を提唱。デジタルの利便性と意に反する交付の排除の両立を訴え、 デジタルに不慣れな高齢者対応は業界の自主規制による親族等への電磁的交付を提案した。一方、クーリング・オフ起算日や契約書面の「直ちに」規定と関わる 「到達」の考え方については、解釈の明確化を求めた。

消費者庁の有識者検討会で意見
 電磁的交付の運用ルール策定を目的に、消費者庁は7月末、「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」を発足。来年春の意見とりまとめと、 夏の政省令案公表を目指している。
 この下部会として、関係者・組織にヒアリングを行うワーキングチーム(以下WT、主査=鹿野菜穂子慶大大学院法務研究科教授)を立ち上げ。 8月31日に第1回会合を開催した。ここでは日本消費者協会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会、主婦連合会の3カ所が、 要件の厳格化などを求める意見を述べている(9月9日号4面既報)。
 このWTの第2回会合(オンライン形式)が9月27日に開催。訪販協のほかに全国消費生活相談員協会、日本弁護士連合会、高芝法律事務所が出席した (訪販協以外の3カ所のヒアリング内容は次号詳報)。
 電子化に対する訪販協の考え方の大枠は、1月の消費者委員会ヒアリングで述べられてきたほか、法案提出直後の3月にも意見書で示されている。 が、電子化が決まった改正法の公布後では初めて。特に、重要なポイントである消費者の承諾のあり方については、意見書で具体的言及を見送っていた。

紙による承諾取得リスク排除できず
 承諾のあり方をめぐっては、消費者庁が法案審議の中で、訪問販売や電話勧誘販売などの「取引がオンラインで完結しない分野」では、施行から当面の間、 紙による承諾の取得を求め、控えを渡させる考えを強調。デジタル化推進の改正にアナログな要件を求める矛盾に、業界の一部などから反発を呼んでいた。
 このような状況下、WTに出席した訪販協は、訪問販売員が携帯する端末を用いた電磁的交付を前提に、書面に氏名を書いてもらうなどして承諾を得る方法では、 デジタルを苦手とする消費者にも電磁的交付が行われてしまうリスクを排除できない可能性を指摘。
 真意に基づく承諾を確保するという承諾の実質化≠フためには、消費者が保有する端末を消費者自身で操作してもらう電磁的承諾が有効として、 消費者から電磁的交付を希望された場合は、
@その場で消費者からメールアドレスを教えてもらい
A消費者の端末にメールフォームのURLを送信し
BURLからメールフォームで承諾の旨の送信を受ける
という3ステップによって同意を得る、メールフォーム方式の取得を提唱した
(図「真意に基づく承諾を確保する方法」参照)。

メール教えてもらうことが「第一関門

 この場合、消費者からメールアドレスを聞く手続きや、受信したメールフォームを通じて承諾内容を入力してもらう手続きが必要。 このような手続きに応じることが難しい消費者には、電磁的交付が事実上困難になると想定した。WTで訪販協の小田井正樹事務局長は、 「メールを教えてもらうところが第一関門になる」「デジタルに不慣れな方はメールフォームで必要事項を入れて返信するところまで行きつかない」と述べ、 このアイデアに対する意見を今後のWTでデジタル専門家から求めたい考えを示した。  本紙の取材には「(紙による承諾は)むしろ間違いも起きやすいのではないか」「デジタルを苦手とする方は承諾が難しい仕組みとするほうが問題が起きにくい」 (小田井事務局長)とした。
 メールフォーム方式の同意を補完する禁止事項には、消費者に代わって事業者が消費者の端末を操作することや紙による交付の有料化、 電子交付へのプレゼントなどを例示。必要条件には、メールフォーム内における電子交付に関する注意事項の記載をあげた。
 さらに、デジタルを苦手とする場合が少なくない高齢者等の対応策については、電子書面の提供方法のあり方に関わり、政省令等で定める要件と、 業界の自主規制で取り組む対策の両面立てを提案
(図「電磁的方法による提供の方法」参照)。
(続きは2021年10月7日号参照)