消費者相談のデジタル化

改修版「PIO-NET」、9月より稼働
「名寄せ」機能を導入、AIは見送り

 コロナ禍にともなうデジタル化が消費者相談の現場でも始まろうとしている。今冬より各種の実証実験に取り掛かり、2023年度以降を目途とした本格導入が目標。 SNS、WEB会議アプリによる相談受付ルートの拡張や、AI(人工知能)を駆使した効率化・迅速化を図る。 相談処理・分析の核となる国内最大の苦情データベース「PIO―NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)」も、その対象。9月の改修では見送られたが、 システム自体の抜本的再構築を目指す次期刷新では、相談現場のあり方も大きく変わることになるという。

コロナで1年延期
 PIO―NETは5年毎にシステムの改修が行われてきた。前のバージョンは15年に改修された2015年版=B このため本来は昨年、2020年版≠ェ稼働する予定だった。が、コロナ禍等の要因で作業に遅れを生じ、延期。 このほど9月より、1年遅れで2020年版≠フ運用が始まった。
 刷新における基本方針や取り組むべき課題は、システムを運用する国民生活センターが「PIO―NET刷新検討会」を立ち上げ、18年に報告書にまとめている。 この中で、最優先で取り組むべきテーマの一つにあげられ、実際に導入されたのが「事業者名の名寄せ」機能になる。

法人番号も活用
 PIO―NETに入力される相談情報は、対面の相談や郵送で契約書面等の資料を入手できた場合などを除き、 相談員が相談者から電話で聞き取ったヒアリングベースとなるケースが多い。あくまで相談者の申告に基づくため、 契約を結んだ事業者名が実際の名称と異なることも少なくない。似たような名前の事業者が複数存在する場合、どの事業者に関する相談なのかという問題も生じてくる。
 このため、今回の刷新では、事業者名のゆらぎ≠窿oラツキを補正する名寄せ機能を搭載。人の手ですり合わせる手間を軽減した。 さらに名寄せの際、法人番号と照らし合わせることで、過去に入力されたデータも補 正。検索精度の向上が図られるという。
 国センは11年前より、PIO―NETのデータを使った「早期警戒指標(急増指標と特商法指標の2種類)」と呼ぶ問題業者のブラックリストを運用しているが、 名寄せ機能はこの指標の運用強化にもつながるとみられる。

メインC承認廃止
 指標の運用強化につながる刷新は他にもある。やはり「―検討会」で優先課題にあげられ、刷新で実現した「メインセンターによる承認手続きの一律廃止」だ。


(続きは2021年10月21日号参照)