ダイレクトセリング化粧品 価値観多様化対応の商品開発

コロナ禍で消費者意識変化
 男性ニーズに新たなアプローチ

 国内化粧品市場では、長年にわたってメンズコスメ(男性用化粧品)によるニーズ掘り起こしが行われてきた。 近年は若年男性を中心にスキンケア、メーク需要も増えてきているが、女性ニーズに比べると微々たるもの。 各社、あの手この手で男性需要開拓を図っているが、コロナ禍の中、それらの施策にも変化がみられる。 従前通り、メンズコスメの投入に加え、性別や年代隔たりなく利用できる商品・サービスの開発も行われている。 コロナ禍に伴う在宅時間の増加や、ビデオ会議が浸透し、自分の顔を見る機会が増えた結果、スキンケアを気にする男性も増えたという。 「ジェンダー平等」がさまざまな場面でみられるようになった、社会情勢の変化も影響しているようだ。
 
▲角層ケアブランド「ネイチャーコンク」は
   年齢・性別問わず愛用されている(ナリス化粧品)
在宅時間増でスキンケア意識

 ポーラでは、ダイバーシティ経営とジェンダー平等を掲げ、今年から男性への肌分析を実施している。近年、男性の美容意識の高まりはあるものの、 未だ美容に対してハードルを感じやすい人も少なくないことから、自分の肌を知ってもらうきっかけ作りと位置づけている。 その結果、2021年1月〜8月までの男性の肌分析の体験人数は、合計で6547件に上り、昨年の同期間の約73倍となった。 年代別では、20代が2370人で最も多く、次いで30代(1439人)、40代(1139人)、50代(574人)、60代(244人)と続き、 若年層ほど体験者が多い。一方、肌分析体験人数を昨年と比較した上昇率でみると、60代が最も多く244倍となった。次いで10代、20代、40代の割合が高くなった。 同社によると、体験者を対象に行ったアンケートで、コロナ禍によるマスク生活で、以前よりも肌状態が気になったり、 オンライン会議の普及によって自分の肌を見る機会が増えたことも、美容への意識の高まり に関係していることが分かった。また、70代や80代男性の肌分析人数も増加し、幅広い世代にスキンケアへの関心が広がっていることが窺えるとしている。
 肌分析は、パーソナライズドサービスブランド「アペックス」を用いて、各地のポーラザビューティー等で行っている。 アペックスは、約1910万件の肌ビッグデータを活用し、862万通りのスキンケア化粧品を提案、その人に適した美容法を見つけるサポートも行っている。 肌分析を体験した男性は、アンケートで「マスク生活で目元のシワが気になり、リンクルショットを購入するために店舗に来店した」 「自分の肌にコンプレックスがあり、担当ビューティーディレクターに肌分析を紹介された」と、意識の変化が背景にあることを言及している。
人気ブランドで多様な需要開拓

 「年代・性別関係なく使用できるアイテム」という視点では、ポーラのシワ改善アイテム「リンクルショット」シリーズが人気だ。 同社は、2018年に男性用メークアイテムを「THREE」ブランドから上梓し話題を呼んだが、 「リンクルショット」シリーズもフックアイテムとしての役割を果たしている。2020年1月に発売した「リンクルショットジオセラム」では、 男性の化粧に対する意識の変化を踏まえ、女性ニーズだけでなく、男性にシワケア需要へのアプローチで訴求した。30代〜60代男性134人、女性80人に対し、 シワに対する意識を調査。「シワがある男性を若くはないと感じますか」という質問に対し、女性回答者では「YES」が58%となった。 一方、男性回答者は85%が「YES」と回答し、女性回答者よりも高い比率となった。シワに対し、 女性よりも男性のほうがエイジングに大きく関係する要因と捉えていることが分かった。同社が「メディカルセラム」を男性(50代)に用いて行った効果実証では、 8週間の使用によって男性においてもシワが薄くなることが分かっている。また、「ジオセラム」を「メディカルセラム」と併用すると、 「メディカルセラム」の浸透スピードがアップするという。
 ナリス化粧品では、角層ケアブランド「ネイチャーコンク」から、増量ポンプタイプのローションをこの6月に限定販売した(薬用クリアローション、 薬用クリアローションとてもしっとりの2種類)。同シリーズは、2013年に誕生したスキンケアブランド。 ナリス化粧品の美容理論の核である「ふきとり」をメーンコンセプトにえて、ふきとり化粧水を軸としたブランドとしては、同社としてドラッグストア流通で初めて展開した。202 1年2月にはパッケージを全面的に刷新し、「赤いふきとり化粧水」として幅広い世代に訴求している。「ネイチャーコンク」のブランドカラーは、 同社のものづくりに対する情熱と、ユーザーを想う「深い愛情の赤」で、リニューアルに際してキャップも赤色に統一し、ブランドカラーを強調。 ブランドロゴのフォントはスッキリと内側から溢れる強さのあるものに、雫マークは植物(Nature)を濃縮(Conc)するというブランド名を表現しており、 植物がとけて成分に変化する様子に変更した。
 発売当初は、30代女性をメインターゲットとするブランドだったが、現在は、マスク着用による肌荒れの悩みに対応するニキビ予防の効果も追い風となり、 カップルや家族で使用するユーザーも増加している。さまざまな層に使用者が広がっており、「ジェンダーレスブランド」「エイジレスブランド」となりつつある。
(続きは2021年11月11日号参照)