フリーランス新法、DS業界に影響は

販売員・ディストリビューターとの取引、規制対象に該当も
一方的報酬減額など禁止、公的機関に申し出↓勧告・命令


今秋に施行される「フリーランス新法」(フリーランス保護新法、以下新法)が一部のダイレクトセリング関係者の間で関心を高めている。最大の関心事は、自社と訪問販売の委託販売員、連鎖販売取引のディストリビューターとの取引関係が、新法の対象になり得るかどうか。該当すれば、新法が禁じる不利益行為をフリーランス向けの「トラブル110番」に相談された場合、行政による調査の結果、勧告や命令、事例の公表、罰金といったペナルティが待ち構える。一方、業界の取引慣行に照らして、大きな影響をもたらす可能性は低いという見方も。新法のポイントを探る。

▲不利益行為の相談を
    フリーランスから
受け付ける
    「フリーランス・
トラブル110番」は、
    厚生労働省や
公正取引委員会とも連携し、
    和解あっせんを実施
    

資本金要件なし


 「フリーランス新法」(以下新法)の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。新法の目的は、特定受託事業者――いわゆるフリーランスの保護だ。20年に政府の成長戦略計画に保護ルールの整備が盛り込まれ、21年にガイドラインを策定。並行して法制度化が進められ、昨年4月に国会で成立した。同5月の公布から1年6カ月内の施行を定められたため、今年11月頃の施行が見込まれている。
 現在、国内では四百数十万人がフリーランスとして働くとされる一方、仕事を委託・発注する側(新法では業務委託事業者もしくは特定業務委託事業者と呼称)との交渉力や情報収集力の格差などを理由に、一方的に報酬を減額されるなどの不当な行為を受けやすい。相対的に弱い立場のフリーランスを守るため、委託・発注側に禁止・遵守事項を定めた。
 仕事を委託・発注する側の不当行為を規制する類似の法律は、すでに下請法が存在する。ただし、下請法は委託・発注側の親事業者の資本金が1000万円以下の場合、適用されない。これに対して新法は資本金を要件とせず、業種を横断して幅広く規制する。中小事業者が少なくないDS業界で、下請法の対象外というケースは珍しくないが、取引相手にフリーランスがいる場合は新法の影響を受けることになる。

窓口整備・配慮義務も


 新法が禁止する主な不当行為は、フリーランスの責めに帰すべき事由がない報酬の減額や返品、相場に比べて著しく低い報酬額、正当な理由のない物品の購入や役務の提供・利用の強制、金銭・役務その他の経済上の利益の提供の要請など(いずれも業務委託期間が1カ月以上の場合)。
 遵守事項は、フリーランスの募集広告の内容が正確かつ最新であること、報酬額などの取引条件を直ちに書面等で明示すること、60日以内の支払いサイトなど。仕事を委託・発注する側からフリーランスにハラスメント行為があった場合に備えた相談窓口の整備では、相談を行ったことを理由とした契約解除などの不利益取り扱いを禁じる。
 また、取引関係を中途で解除したり、更新を行わない場合は、最低でも30日前までに予告し、解除等の理由の開示を求められた際に応じることを義務化。フリーランスが育児や介護に携わっているなら、業務と両立できるようにする配慮義務も盛り込んでいる。

相談、月7百件台


 このような禁止・遵守事項に反する行為をフリーランスが受け、そのことに納得できない場合は、「フリーランス・トラブル110番(以下トラブル110番)」と呼ばれる相談窓口が用意されている。
 「トラブル110番」は、政府が保護ルールの整備に乗り出した20年に設置。厚生労働省から委託された第二東京弁護士会が相談業務を引き受け、同省や内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁と連携して運営する。相談は弁護士が対応し、匿名の相談が可能。無料で和解あっせんも請け負う。
 相談件数は増加傾向にあり、22年度は月平均で570件程度の相談が寄せられたところ、23年度(4月〜12月)は747件に増加。23年度に受け付けた和解あっせんは173件に達する。


(続きは2024年3月28日号参照)