アシュラン「見せる施設」探訪@ 「安心・安全」で高品質を提供

伝統と革新の融合「出水酒造」 酒造会社として例のない工場設備


 スキンケア化粧品などを展開するアシュラン(本社・福岡県大野城市、東孝昭社長)は、2024年3月に30周年を迎えた。企業の盛衰が激しいダイレクトセリング業界において、長年にわたって事業を継続するのは決して容易なことではないが、同社は着実な歩みを続けて強固な地盤を築いてきた。アシュランは、信頼性、透明性をキーワードに、会員だけでなく、業界の内外、さらには地域に開かれた企業として認知度を高めてきた。その取り組みは、本社のある福岡県大野城市だけでなく、東社長の出身地である鹿児島県出水市でも大規模に展開されている。出水市にあるアシュランの「見せる施設」「見える施設」を訪ね、地域密着の施策を取材した。

東社長の出身地出水市で展開


 出水市は、鹿児島県北西部に位置する人口約5万人の市で、九州新幹線「出水駅」は九州の玄関口である博多駅から1時間強というアクセスの良さだ。ツルの渡来地として知られており、冬には多くの観光客が訪れ、2021年には「出水ツル渡来地」がラムサール条約指定湿地に登録された。また、薩摩武士が生きた町としても知られ、武家屋敷群などの「出水麓」は、2019年度日本遺産に認定されている。自然豊かな土地と歴史を誇る出水市は、東孝昭社長の出身地であり、東社長はかねてから雇用創出や経済活性化など、さまざまな角度から地域活性化を思案。その想いは、2011年に地元の酒造会社を取得し、出水酒造(旧・霧島横川酒造)として登記したことから本格的にスタートした。2013年には、出水市内に出水酒造の新工場を竣工、2016年には、工場の隣地に「ホテル泉國邸」をオープンし、現在に至る。
▲グリーンと淡いベージュの外観の出水酒造工場
 2つの施設は、出水駅から車で数分の距離にある。矢筈岳山系朝日岳を源流とする米ノ津川(通称・広瀬川)を渡ってしばらく走ると、出水酒造、ホテル泉國邸の大きな建物が見えてくる。どちらの施設もグリーンと淡いベージュを基調としたカラーリングが目を引く。福岡県大野城市の本社および関連施設との統一感があるため、会員には一目で「アシュランの施設」であることが分かることだろう。特に、出水酒造の工場は、一見すると酒造工場には見えないつくりで、女性会員が多いアシュランならではの、やさしいイメージを彷彿させる。

女性でも楽しめる焼酎づくりを


 出水酒造は、用地面積約5500坪、建物面積約2800坪を擁し、その歴史は旧・霧島横川酒造時代を含めて70年以上にわたる。焼酎づくりには、地下250メートルから汲み上げた天然水を使用。pH8・2、アルカリ性で素材の味を
▲焼酎づくり20年以上のベテランである
池田統一取締役 工場長
一層引き出すとされる。さつま芋は、自社農園を含む鹿児島県産の黄金千貫を、米も自社農園を含む鹿児島県産の米麹を使用(一部国産)。アシュランのものづくりの基本となる、”安心・安全”をモットーに、原料にもこだわっているのが特徴だ。焼酎づくりで用いている天然の地下水は、工場横で「出水酒造の仕込み水」として無料提供しており、容器を持参すれば誰でも持ち帰ることができ、近隣住民も利用している。
 焼酎づくりを取りまとめているのは、取締役工場長の池田統一氏。旧・霧島横川酒造時代から携わっており、焼酎づくり20年のベテランだ。旧・霧島横川酒造時代は、昔ながらの薩摩焼酎のどっしりとした味わいを特徴としていたが、出水酒造として新スタートを切ってからは、女性でも楽しめる焼酎を意識して酒造りを行ってきた。池田工場長は、「味つくり、ブランドづくりからまさにゼロからのスタートだったが、焼酎づくりについては東社長から完全に任されてきた。責任重大だが、その分、やり甲斐もあった」と振り返る。

本格的味わいや梅酒まで幅広く


▲見学しやすいよう設計された広い通路
 出水酒造では、薩摩焼酎としての伝統と、現代の酒造りを融合させた焼酎を展開。独自の技術とブレンドの工夫うでスッキリした味わいに仕上げた「出水に舞姫」をはじめ、「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2022」で金賞を受賞するなど、数々の賞を受賞してきた「赤鶴」、こだわりのかめ壺で3年寝かせた全量古酒「泉之國」などをラインナップ。さらに、本格芋焼酎の原酒を信楽焼のかめ壷で長期熟成させ、国産ミズナラの木製樽で熟成させた熟成焼酎「フォルトゥーナ」や、ワイン酵母と黄麹を組み合わせ、フルーティーで華やかな香りを楽しめる「ボヌール」など、新しい発想を取り入れた焼酎をつくっている。珍しいところでは、女性にも人気のある梅酒「出水の手造り梅酒」も展開。南高梅の完熟梅を同社の本格芋焼酎で漬け込んだ。池田工場長によると、出水酒造の焼酎は、現代のニーズを踏まえて味を変化させ、薩摩焼酎としての本格焼酎から、料理と一緒に楽しめるような軽い味わいまで幅広いのが特徴となっている。現在、デパートや卸、公式オンラインショップなどで販売しており、年間で3000石(約54万リットル)を全国各地に出荷している。
▲出水酒造のこだわりの1つである「麹室」
 工場内は見学が可能で、通常「20分コース」「50分コース」の2コースを用意している。アシュランでは、化粧品工場施設である「サンセールミキ鳥栖工場」(佐賀県鳥栖市)においても工場見学を実施しており、施設の設計段階から「見せる施設」をコンセプトに取り入れて、他に例を見ない見学施設となっている。こうした取り組みは、安心・安全と品質管理を徹底したものづくりの現場を直に見てもらうことで、アシュランの化粧品、ひいてはブランドへの信頼感につながっていると言える。出水酒造の工場見学も同様のコンセプトで実施されており、工場竣工時から見学を念頭に置いた設計を施された。

(続きは2024年6月6日号参照)