DS化粧品のサロン戦略 組織強化のカギは 「コミュニケーション」

高齢販売員切り捨て≠ヨの不安 どう埋める?世代間ギャップ


▲時代の変化に悩むサロンは少なくない
(写真と本文は関係ありません)

 ダイレクトセリング業界では、分野を問わず販売員の確保が大きな問題となってきた。これは、バブル崩壊後に訪販市場の縮小が始まった頃から取り沙汰されてきたが、近年は団塊世代の高齢化、人口減少にともなう労働力不足を背景により深刻さを増している。中でも、老舗の訪販企業では、ベテラン販売員が、今後5年〜10年で大量離脱することが予想される。コロナ禍で顧客と直接対面できる機会が減少したこときっかけに、そのまま引退するケースもみられ、営業力の低下も懸案事項となっている。特に、訪販化粧品分野では、サロンビジネスが大きな過渡期を迎えていることから、販売組織の円滑な世代交代が喫緊の課題となっている。

訪販知らない若手世代


 「最近は、訪問販売という事業形態自体を知らない若手もいる」。こう話すのは、40年以上の社歴をもつ老舗訪販企業のあるスタッフ。長年にわたって家庭用機器をメーンに販売してきた同社だが、最近は新規開拓よりも、既存顧客のフォローで、機器のメンテナンス時などに商品を紹介し、販売する形態が多いという。以前に比べて新規開拓の規模が縮小したとはいえ、販売員の獲得は常に必要であり、募集をかけているが、若手の販売員では、冒頭のようなケースがあるという。これには良し悪しがあり、「デジタルネイティブ世代は、生まれたときには既にネット通販が主流で、訪販は昭和の時代のビジネスモデルとして馴染みがない。その分、ネガティブなイメージもないため、偏見にとらわれずスムーズに営業できるという強みがある」(前出のスタッフ)。ドア・ツー・ドアのような従来型の訪販は、都市部ではほとんどみられなくなったが、郊外に目を向けると、リフォーム事業などを手掛ける企業が積極的に展開しているケースもみられ、そこでも若手は重要な戦力となっているようだ。
 若手販売員の獲得は、ダイレクトセリング化粧品分野でも切実な問題となっている。最大手のポーラでは、バブル期には20万人もの委託販売員を擁していたが、現在(2023年12月期)は約2.3万人と、10分の1近くの規模となっている。これは委託販売員の位置づけが異なるため、ポーラレディ時代の20万人は、従来型訪販を担ってきた販売員の数字。一方、約2.3万人という数字は、現在の委託販売チャネルにおいて営業活動に携わるビューティーディレクター(BD)の人数となっている。2016年1月の経営体制刷新に合わせて、委託販売員の構成を変更したことで、それまで愛用者的な販売員を含む人数でカウントしていた販売員のあり方を見直し、「美容のプロフェッショナル」としてビューティーディレクターを定義し、ビジネスに専念する人材として研修・リクルート制度を用意して次世代のビジネス人材の育成を目指してきた。当初、約13万人だったビューティーディレクターは、”精鋭化”を進めた結果、2017年には約4・2万人。さらに、現在は約2.3万人という規模となったが、これは、精鋭化が進んだという要因だけでなく、長年ポーラのビジネスを支えてきた販売員が、高齢化によって引退していることが大きく関わっている。特に、コロナ禍でポーラが得意としてきたサロンをコミュニケーションの拠点として活用する対面販売が難しくなったことで、これを機に一線から退くケースがみられる。同社によると、ベテラン販売員の離脱は、そのスピードにブレーキがかかり始めているというが、新規販売員の加入がベテランの引退をカバーしきれておらず、販売組織の縮小が続いている。

「ついてゆけない」 ベテラン引退の一因


 ポーラでは、従来のサロン網の縮小をカバーする方策の1つとして、今年度から新サロン戦略を立ち上げ、OMOを基軸とした若年層向けの販売網の構築をスタートさせる。


(続きは2024年6月20日号参照)