岐路に立つ化粧品訪販 老舗・大手の業績分析 シーボン@
サロンビジネスの先駆け企業
60周年控えるも苦戦続く
本項では、老舗ダイレクトセリング化粧品の1社であるシーボンの業績面での動向を踏まえ、同社が目指す方向性について探っていく。

「フェイシャリストサロン」は、ほぼ直営店による店舗展開を行っており、2009年11月には新百合ヶ丘店(神奈川)の出店により、直営100店舗を達成。現在も100店舗規模での事業展開を維持しているが、現代消費者のニーズの変化を受けて、そのあり方については変革する動きを強めている。特に、同社は2026年に創業60周年を迎えることを踏まえ、「60th Anniversary プロジェクト」において、新コンセプトと新ビジュアルを策定。段階的に製品のリニューアル、サロンの改装、サロンで接客するフェイシャリストの知識・技術・サービスの向上を進めている。同社では、長年にわたって3つのFACIALIST(化粧品、人、サロン)で「ホームケア+サロンケア」による美容サービスを提供してきたが、ホームケアとサロンケアという”人の手”によってケアを提供し、「揺らぎを安定、そして調和させてビューティーリズムを整える」という「共奏美容」を提案。美容業界ではさまざまな機器を用いたケアがあるが、同社では、長年培ってきたフェイシャリストによる手技や、化粧品による美容を展開。「フェイシャリストサロン」についても、ニーズに応じたスタイルを展開、都市部では高付加価値訴求型のラグジュアリータイプを、近郊部では従来の「フェイシャリストサロン」のコンセプトを踏襲し、新たなユーザーとの接点となるよう役割分担を区分するとしている。
このような動きの背景には、従来型のビジネスモデルでは女性のニーズをとらえることが難しくなってきているという危機感がみられる。同社では、メンズ用のアイテムを開発するなど、女性以外のマーケットを開拓したり、海外市場への展開も行うなど、新規事業への取組みにも積極的だ。その一方で、売上の主力は直営店舗、つまり国内の女性ニーズによって支えられている。2023年3月期では、直営店舗の売上シェアは実に91・7%に上り、残りを通信販売(3・7%)、国内代理店(1・5%)、海外代理店(0・9%)などで構成しているかたちになる。直営店舗の強さを示す数値とも言えるが、これまでの業績推移をみると、その”強さ”も大きく衰退していることが分かる。
グラフは、2009年3月期から直近の2025年3月期までの約16年間におけるシーボンの売上高と売上高営業利益率を示したもの。2019年3月期以降は連結決算の数値となっている。これをみると、売上高のピークは2014年3月期の150億1700万円。同社の中では手薄だった関西エリアへの販売網強化等の施策に加え、消費増税前の駆け込み需要等が影響した。この頃のシーボンは、WEBを活用したブランディングやイベント・プロモーションも展開していたほか、展示会へのブース出展など異業種とのコラボレーションによるお手入れ体験を積極的に展開し、「リアル店舗による対面販売・カウンセリング」というサロンビジネスの強みを活かした施策が目立った。新規顧客を如何に誘導するかは、どのような企業も大きな課題だが、シーボンにおいても同様で、売上ピークを達成した翌年の2015年3月期は、売上・利益ともに減少。主な理由としては、集客費用の経費効率等を重視して集客規模を縮小した結果、新規顧客数の減少を招いたことを挙げている。
さまざまな試行錯誤の中、業績面では前後していたものの、概ね120億円〜140億円台を維持していたシーボン。だが、それがコロナ禍によって大きく崩れ、現在も回復には至っていない。
(つづく)
(続きは2024年11月7日号参照)