社説 地域に根ざしたブランド戦略

昨年創業65周年を迎えたオッペン化粧品は、地域との連携強化に取り組む企業の1社だ。 1面で報じているように、毎年恒例のイベントと開催している「ローズウィーク」は、本社敷地内にあるバラ園をこの時期に一般開放するものだが、 6回目を数え地域密着イベントとして定着している。今年は天候に恵まれたこともあり、多くの見学者が訪れた。
ローズウィークは、バラ園を一般に公開することで近隣住民との交流・親睦を図る目的で2014年から行われている。交流は地域住民にとどまらず、 自治体や学校、企業と裾野を広げつつある。恒例となった大阪学院大学とのさまざまなコラボレーション企画に加え、 昨年からは、本社のあるJR岸辺駅周辺の再開発計画健康・医療を中心とした都市構想「北大阪健康医療都市・健都」に関連して、 同構想に携わる吹田市も加わり、吹田市のゆるキャラ「すいたん」も登場している。期間中に催されるさまざまイベントも毎回変化しており、 今年は初の取り組みとしてクラシックコンサートが開かれた。イベント自体の告知は地域へのチラシ配布や岸辺駅のポスター掲示等がメーンで、 大掛かりなものは実施していない。来場者によるクチコミや、イベントがローカルニュースで取り上げられたこと、 さらには車窓から見えるバラ園が気になったバラ愛好家が訪れる等、「地道な活動」(同社)によって知名度が高まっていったようだ。
ブランドアピールのためのイベントの手法にはさまざまあるが、オッペンのローズウィークは、 同社がめざすブランド訴求のあり方を象徴しているものだと言える。瀧川照章社長は、 ダイレクトセリングを軸に展開する同社のビジネスモデルの強みについて、「さまざまな世代という”タテ軸”に絡めた施策を打ち出すこと」と 言及しており、特定の世代に偏らない製品戦略・ブランド戦略こそ、老舗化粧品ブランドに求められているとしている。 これに対し、近隣住民を中心にクチコミで広がってきたローズウィークのようなイベントは”ヨコ軸”の施策と位置づけられる。 タテ軸、ヨコ軸いずれも急進的な内容ではなく、少しずつ浸透・定着してきたものだ。 ローズウィークは既に地域との密着を深めるという目的を達成しているが、さらに工夫を凝らして良い内容を目指すとしている。
課題もある。ブランドの浸透が進んでいる一方で、それが短期間のうちの業績には直結しない点だ。 販売チャネル多様化の現在、同社もサロンのテストマーケティングや主に既存ユーザー向けの公式オンラインショップを展開しているが、 事業の核はあくまでも販売員によるダイレクトセリングと位置づける。老舗企業の多くが抱えている販売組織の高齢化という課題は、 同社にも当てはまる。30~40代女性をターゲットとしたメークブランド「ジュヴール」や、 若年層向けスキンケアブランド「オランジェール」を展開して新規ユーザーの獲得を図っているが、まだ時間を要するようだ。 他方では、海外展開も緩やかに進めている。同社が志向する緩やかな変革の今後が注目される。