社説 救済基金、総会で現状の説明を

日本訪問販売協会の通常総会が6月18日に開かれる。ここで議題の一つに浮上しておかしくないのが「訪問販売消費者救済基金」のあり方だ。 周知のとおり、一昨年末に破たんした「ジャパンライフ」のレンタルオーナー契約者から、救済基金による肩代わり弁済を求める申請が相次いでいる。 申請の一部は却下されたが、大阪の被害対策弁護団経由の申請は保留中。想定外の事態とはいえ、 現行の制度が”バグ”を生じていることが明らかな以上、基金設置当時の突貫工事のツケを払うべく改めてそのあり方が問われる。
「ジャパンライフ被害対策大阪弁護団」は昨年夏、ジャ社とオーナー契約を結び、総額で億単位の返金を受けられていない11人分の申請を代行。 4月中旬の段階で、申請の手続きは「ほとんど進んでいない」「まだ、入口の段階」としており、審査を保留扱いとされている。
審査が一向に進まないのは、全国に散らばる他の被害対策弁護団からも同様の申請が寄せられる可能性があるため。 弁護団からの申請を一通り受け付け終わった段階で、まとめて審査に入りたい考えを、協会事務局のほうではもつ模様だ。 大阪の弁護団のほうでも、同様の被害に見舞われたオーナー契約者への配慮から、今のところ審査を急かすような動きは取っていない。 が、理由はそれだけではない。
大阪の弁護団が申請を代行した11人は、1人あたり平均6~7件の契約をジャ社との間で締結した。 これら個別の契約が救済基金の利用要件に合致していた場合、基金の制度上は”1契約あたり”の弁済上限額を100万円としている関係から、 最大で6600~7700万円の弁済が発生する可能性がある。
救済基金の原資は約1・1億円に過ぎず、残額が基金スタート時の60%にあたる5112万円を下回った場合は、会員から再度、 積立金を徴収するルール。そうなれば、基金への積立金拠出をめぐって二十数社の退会を出した、当時の混乱の再来も懸念される。
一方、3月下旬にまとまめられた今年度の事業計画は、基金制度の見直しを盛り込んでいない。 保留中の申請や今後寄せられるだろう申請の処理を優先するため、あえて見直しを先送りするという判断であれば、頷けなくはない。 実際、昨年の段階で一社あたりの弁済上限額を設ける案は見送られている。
が、そのような事情があったとしても、被害の深刻さを鑑みれば、運用面において協会事務局はその門戸を広げるべきだろう。 大阪の弁護団によれば、昨年の申請代行と並行して、弁護団で作成した”申請用フォーマット”のひな形を協会事務局に提示。 この共通の書式を使って、他の弁護団からも申請が行われるなら事務局の負担の軽減になるとして意見を求めたが、 4月中旬時点で具体的な返答を受けられていないという。現行の仕組みが円滑な運用という点で明らかに不具合を起こしているにもかかわらず、 アドバイスをあえて目に入れないかのような対応には問題がある。せめて通常総会では、現状と今後の方針の説明、 会員の意見を聞く場を用意すべきだ。