社説 消費者庁 問われる特商法の執行力

消費者庁による特商法の執行は適切・厳正に行われているのか。カード型USBメモリを商材に、 いわゆる預託商法(預託法は指定商品制でありUSBメモリは指定外)を連鎖販売取引と訪販で展開していたWILL(ウィル)(株)に対する 一連の法執行には多くの疑問が残る。
消費者庁は同社に対して昨年12月に、預託商法を連鎖販売取引で展開していたとし、氏名等の明示義務違反、重要事項の不告知、 契約書面交付義務違反を認定し2018年12月21日から15ヵ月間の業務停止を命じ、併せて同社の代表取締役ら6人に同期間の業務禁止を命じた。 続いて、消費者庁は今年7月、同社が同じカード型USBメモリを商材に今度は訪販で預託商法を展開していたことから、 不実告知の違法行為を認定し、2019年7月20日から24ヵ月間の業務停止を命じた。 併せて、ウィルの統率の下で同商法を訪販で展開する7社に18ヵ月間の業務停止を命じ、それぞれの代表取締役等に業務禁止を命じた。
これらの経緯から明らかなように、今年7月の訪販の業務停止命令は、2018年12月の連鎖販売取引の業務停止命令の発動の最中に 新たに訪販による違法行為を認定して処分したものだ。
そこで第1の疑問は、昨年12月の処分における取引形態の認定に際して、連鎖販売取引を認定しながら訪販に該当する行為を本当に 把握できなかったのかということだ。連鎖販売取引への勧誘であっても、その要件となる「特定利益で誘引され、特定負担をする」行為に 至らない段階(訪販)で、執拗・強引に勧誘されてトラブルになるような事例は全くなかったのか。極めて疑問と言わざるを得ない。 この時に訪販も認定しておればその後の7ヵ月もの間の違法行為は防ぎ得たと考えられる。
ジャパンライフへの処分の場合は、第1回目の処分から訪販と連鎖販売取引の両方を認定したが、いずれの違法行為も細切れに認定し、 初回の業務停止期間は僅か3ヵ月。2回目にしてようやく9か月、3~4回目にしてやっと12ヵ月となった。 処分の在り方から見た不手際は覆うべくもない。
第2の疑問は、ウィルに対して昨年12月の業務停止命令と合わせて出された指示が、適正に履行されたのか否かということだ。 この時の指示事項は、「違法行為の発生原因について調査分析の上検証し、 その結果を2019年1月21日まで消費者庁長官に文書で報告すること」であった。ウィルはまともな報告をしたのか。 消費者庁は指示の履行状況に関する本紙の取材に「捜査に係ることなので、報告があったか否かを含めてお答えできない」としており、 その中身は藪の中だ。
しかし、今年7月の訪販に係る業務停止命令に際しても「違法行為の発生原因について、調査分析の上検証し、 その結果について文書で報告すること」と類似の指示をしていることから見ても、昨年12月の指示事項が適正に履行されているとは考え難い。 消費者庁は指示の履行状況を明らかにすると共に、その不履行については、刑事告発をためらうべきではない。