FTCがア社提訴 在庫問題、国内業界も熟考を

  ピラミッドスキームを運営したとして米FTCから提訴された米MLM大手「アドボケア」が、1億5000万ドルの和解金支払いやMLMの恒久禁止を条件に 和解した(10月17日号1面既報)。注目されるのは金額の巨額さ、恒久禁止の厳しさだけではない。勧誘トークの背後にあった過剰在庫問題の根深さも業界に 改めて突き付けられた格好だ。
 FTCの発表や訴状によれば、同社やリーダー会員はMLM未経験の消費者に対して「無限に利益を生み出すことができる」「無制限の収入と経済的な自由が得られる」 といった主張を展開。1200~2400ドル分の製品を購入して登録し、別の消費者にも同様の買い込みをさせることが推奨されていたとする。
 一方、現実に得られた報酬は説明と大きく異なっていた。14年からの約4年間、ビジネス会員の7割(製品販売額ベース)は報酬額が製品購入額の10%に満たず、 まったく報酬を得られていないビジネス会員は16年時点で 72%に達していた。
 今回の提訴が米業界にとって重い意味をもつのは、15年のビマ、16年のハーバライフに続く3度目の大手提訴であること。 ごく短期間に、しかも米DSAの主要メンバーでもあった3社が、過大な報酬の宣伝と支払い実態との乖離を理由に相次いでFTC法違反を問われたことは、 MLMのネガイメージのさらなる拡大を招くだけでなく、DSAの他のメンバーも改めてビジネスモデルの見直しを求められる懸念を呼ぶ。
 FTCはハ社との和解後、MLMビジネスと切り離されたカスタマーへの小売りを基盤とする報酬モデルを強く推奨してきた。その目安の一つが所謂「4原則」。 実態ある愛用者による製品の消費、適正な利益に基づく事業の継続性、愛用者を強引にMLMビジネスへ誘因することの 禁止、実態ある小売販売を基礎とした報酬支払いを求め、18年には、4原則を18項目に渡り解説した「ビジネスガイダンス」も公表した。
 ハ社に和解条件として課された、報酬額の最低3分の2が最終消費者への販売か自己消費に基づくこと、卸売り売上の80%以上が小売もしくは ビジネス会員によって適切に消費されることも、事実上目安の一つ。公に競合他社を拘束するものではないが、FTCは同条件が他のMLMにとっても「有用」 という表現で暗に尊重を求めてきた。
 このような背景から主要各社は近年、小売りや愛用層を源泉とする報酬プログラムの修正・追加に着手。この流れは日本で営業する外資に持ち込まれ、 大手ではニュースキンが新プラン「ベロシティ」で愛用層拡大やセラー型ビジネスを後押しする。最大手のアムウェイも日本を含む各国市場で9月より、 「コアプラス」と呼ぶ小売り・愛用層拡大に連動した新プログラムをスタートさせた。
 同様の過剰在庫問題は日本でも業界を覆い、横流し先のネットオークションや安売りサイトによって可視化されていることは周知の事実。 FTCが振るったような大ナタを国内行政も検討している兆しは窺えないが、国を問わず共通する古くて新しい問題として業界各社は排除策を改めて熟考すべきだろう。