消費者庁は「天下り」問題と向き合え

  販売預託商法による消費者被害が 継続・拡大する傾向にある中で、消 費者庁と消費者委員会の足並みが揃 わない。消費者委員会は2019年 8月30日、同取引を対象に新法の制 定を視野に入れた「いわゆる『販売 預託商法』に関する消費者問題につ いての建議」を、内閣府特命担当大 臣と国家公安委員会委員長に発出 し、2020年2月までにその実施 状況の報告を求めている。又、同日、 同建議に係わる「意見」も発出して いる。これら では、同預託商法につ いて、「現行の各法律(預託法、金 融商品取引法、出資法、特商法など) による対処には限界があり、被害を 根絶するために、早急に法制度を整 備することが必要である」とし、具 体的には①破綻することが明らかな 類型の取引形態を禁止し、罰則規定 により担保すること、②被害が拡大 する前のよりはやい段階で取締りを 実施できる要件を設定すること、③ 犯罪収益を没収し、被害回復につな げる仕組 みを導入することが必用と している。
 消費者委は同建議等を発出するに 先だって、ほぼ同一の内容の意見案 を消費者庁に示し意見交換を行って いる。ここで消費者庁は同案に対し て、「現行の悪質な販売預託商法は 訪販や連鎖販売取引等の取引形態を 用いて行われており、「『商品を売 って預かる』という行為自体に問題 の本質があるものではない」、「現 行の特商法による厳格かつ強力な法 執行を行っていく必用がある」とし て、ジャパンライフとWILLへの 処分を示 した上で以下のように指 摘。「仮に新法を制定しても、特商法 等の禁止行為に重畳的な規制を重ね るだけの内容にならないよう、その 内容を慎重に検討すべき」。つまり、 特商法を中心にした法執行で対応す るとし、早急な新法制定の必用性に 否定的な姿勢を示した。しかし、消 費者庁のジャパンライフとWILL に対する法執行には、本紙がこれま で指摘してきたように多くの問題を 内包していた。同庁のいう「厳格か つ強力な法執行」には疑問符がつく。
 ところが、消費者委は新法の 制定 に傾斜するあまり、これら2社に対 する消費者庁の「法執行の妥当性」 について本会議では議論(検証)し ていない。消費者委は建議等で、新 法の内容に「破綻が明らかな取引形 態を禁止し、罰則により担保する」 「消費者に泣き寝入りさせないため にも犯罪収益を没収し、被害回復に つなげる仕組み」の導入が必用など としている。しかし、2社に対する 特商法の運用で刑事告発が行われて いない実態を踏まえれば、罰則担保 は機能するのか極めて疑問だ。又、 犯罪収益の没収にしても、ジャパン ライフの事例からも明らかなよう に、資産は既に散逸しているという 実態がある。このような実態を目前 にしたまま仮に、新法を制定したと しても、法は機能せず、元の木阿弥 に帰するのは目に見えている。
 このような事実に照らせば、 今、 消費者委に求められるのは、2社に 対する法執行が厳正に行われたのか ついて検証し、それに基づいた建議 を行うことである。特に、明らかな 業務停止命令違反と指示不履行に刑 事告発をしなかった理由は明らかに されなければならない。