多様な付加価値の訴求こそ

 本紙が2019年12月に実施した 「第67回ダイレクトセリング(DS) 実施企業売上高ランキング調査」で は、調査企業121社(小売ベース 58社、卸ベース63社)の小売ベース の売上高総額は1兆4784億99 00万円となった。このうち、前期 と比較可能な119社の総売上は1 兆4739億9800万円、前期比 0.7%減と、前回調査から転じて マイナスとなった。ダイレクトセリ ング業界では、老舗や大手企業を中 心に、業態改革が業績 面にも反映さ れた一方で、これまで追い風となっ ていたインバウンド需要の落ち込み などがマイナス要因として働いた。 ビジネスモデルとして普遍化したサ ロンビジネスの競争激化や多様化、 それに伴うサロンの独自性強化、人 材の確保・育成など、さまざまなア プローチで「次の一手」も模索する 企業が増えている。  今回の売上高ランキング調査で は、一部の老舗・大手が引き続き堅 調な動きを示したほか、事業規模が 比較的小 さい新興MLM系企業や、 住宅リフォーム系企業で高い増収率 を達成したケースがみられた。調査 を増収率ベースでみた場合、上位か らアフロゾーンジャパン(前期比38 .6%)、高陽社(同38.1%増、 本紙推定)、スターリジャパン(同 27.6%増)、M3(同25.0%増)、 サニックス(同20.5%増、)訪販 部門の「ホームサニテーション事業」 における数字)、ゼンノアジャパン (20.0%増、本紙推定)、日本エ コ でんき(同17.6%増、本紙推定)、 セプテムプロダクツ(同13.3%増)、 ハーバライフ・オブ・ジャパン(12.5%増、本紙推定)、トップラン (12.3%増、本紙推定)と続く。 住宅リフォームやソーラーシステム を主力商材とする企業は増収率ラン キングの常連だが、今回の調査では この業界の主力商材である健康食品 や化粧品をメーンとする企業が多く 上位に入った。セプテムプロダクツ (同13.3%増)が引き続き上位10 社にランクインしたほか、ポーラや 御木本製薬はランク外となったが、 堅調に推移している。ポーラは 直近 業績(2019年12月期第3四半期) で「POLA」ブランド売上高が落 ち込んでいる。新規美白成分を配合 したスキンケアの投入などがあった 一方で、インバウンド需要が大きか ったサプリメント「インナーロック」 の売上減が響いた。
 化粧品分野では、増収率トップ10 にはランクインしていないが、日本 メナード化粧品、ノエビア、ナリス 化粧品といった老舗大手企業が増収 基調にある。高付加価値を訴求した 化粧品が好調に推移しているほか、 独自性のあるサロン展開によって顧 客接点を活性化させている点が共通 している。高増収率を達成したセプ テムプロダクツは、若年層や新規グ ループの活躍が業績を押し上げてい る。組織の活性化や若年層の獲得は ダイレクトセリング企業共通の課題 だが、グループの「核」を担うリー ダー を育成し、新たな組織の広がり をみせている好例と言える。
 多様なライフスタイルをもつ消費 者のニーズを汲み取り、どのように ブランドに反映していくのか。企業 としてのあり方の変革も求められる 時代になっている。