消費者志向自主宣言への取組みを

 消費者行政の趨勢を見据えた場 合、ダイレクトセリング(訪販と連 鎖販売取引、以下「DS」)業界は、 一段と消費者志向経営を求められる 環境にある。消費者庁による202 0年度を初年度とする2024年度 までの「第4期消費者基本計画(案)」 では、 「消費者政策の基本的方向性」 について、「消費者と事業者とのW in‐Win関係の構築」として次 のように指摘している。「事業者の 健全な発 展は消費者利益に資すると 共に、消費者利益の増進は事業者や 産業の発展に資する。健全な市場を 形成し、国民生活の安定と向上を図 るために、消費者と事業者の双方に メリットをもたらすような関係を構 築しなければならない。このため、 消費者・消費者団体と事業者・事業 者団体との間で意見交換を行い、消 費者利益の増進や事業者の健全な発 展に向けた取組を進めるための枠組 みの構築を図る」。「企業として社 会的責任を果たしていると多様 な関 係者から評価され、円滑な資金調達 に繋がるよう、消費者志向経営が社 会の基本認識となるべく取組む」。
 DS業界は、これまでの社会的評 価と今後の成長を視野に入れれば、 当然これら政策を意識した経営が求 められる。行政のこれら取組の枠組 みから外されては、業態・企業とし ての存在感が薄れていかざるを得ま い。このような環境への対応策の1 つとして考えられるが、消費者庁 (消費者志向経営推進組織事務局) が運用す る「消費者志向自主宣言・ フォローアップ活動」への参画だ。
 「消費者志向自主宣言」とは、各 企業において消費者志向経営に誠実 に取組む旨の宣言を行い、その後そ のフォローアップ活動を行うこと だ。同宣言に盛り込む内容は、「理 念」としての消費者志向経営につい て自社の考え方や目指す方向、及び 「取組方針」として消費者庁の「消 費者志向経営の取組促進に関する検 討会報告書」に盛り込まれた「消費 者志向経営の取組の柱」を参考に、 独自の考えを明らかにすることだ。 こうして作成した自主宣言を自社の Webサイトに掲載すると共に、消 費者庁に 対して「これを掲載してい る自社WebサイトURL」「企業 名、連絡窓口の所属・役職・氏名等」 「これまでの具体的活動実績や今後 の取組予定」を提出。これらを受けた 消費者庁がその内容を、同庁のWe bサイトに掲載するというものだ。
 同宣言を行い、フォローアップ活 動を行っているのは、2019年 月日現在で119社に上る。推進 組織が2016年に発足した経緯か ら見て多いとは言えないが、その中 で目立つのは生・損保企業だ。そこ には2007年から2008年に掛 けて保険金の支払い漏れトラブルが 多発し、金融庁から行政処分を受け た会社が少なくない。一方、DS業 界からはアルソア本社とナリス化粧 品が含まれている。両社は日本訪問 販 売協会の正会員だ。DS業界では、 化粧品は最大の市場規模を誇り、同 協会の消費者相談室に寄せられる正 会員の「問題性あり」相談件数は極 めて少ない。従って、消費者志向自 主宣言を行うにふさわしい企業は少 なくない筈だ。これら企業は積極的 に自主宣言を行い、DS業界の先導 役の役割が期待される。