預託法検討委 救済基金の仕組みも見直せ

 1月末、「販売預託商法」の法規 制を検討するため、「特定商取引法 及び預託法の制度の在り方に関する 検討委員会(以下検討委)」の発足 が発表された(初回会合は2月18 日)。考えられる規制は現物まがい 商法や元本保証の禁止、参入規制の 導入、非実在物品等の取引禁止、所 管官庁への調査権付与など。多岐に わたる分、議論のスピードが求めら れてくる。一方、これらはあくまで 被害の防止・抑止の手段。対策の片 輪でしかない。両輪と するには被害 回復のための新たな仕組みが重要 で、同時に、「ジャパンライフ」被 害者から申請が殺到した日本訪問販 売協会の「訪問販売消費者救済基金 (以下救済基金)」でも、機能不全 の検証と新たな制度設計が求められ る。
 現時点でアイデアにのぼる被害回 復の仕組みには、クーリング・オフ や中途解約といった民事ルールのほ か、預託法における禁止行為違反等 の被害回復給付金支給制度の適用対 象化、行政庁への破産申立権の付与 などがある。
 ク・オフや中途解約は特商法等で すでに普及した仕組み。06年にスタ ートした被害回復給付金支給制度 は、対象が詐欺や恐喝、出資法違反 などに限られるため、預託法の改正 で販売預託商法も対象化するアイデ アになる。破産申立権の付与は、す でに13年の消費者庁有識者会議で議 論済みの案。対象を同商法に限定し ない導入の道も考えられる。
 一方、検討委発足のきっかけとな ったジャ社破たんをめぐっては、 「救済基金」による肩代わり弁済を 求 めるジャ社被害者の申請が協会に 相次ぐにもかかわらず、初めての申 請から2年が経過した現在も1件の 弁済も行われていない。
 背景には、協会加盟企業の破たん にともなう申請を想定していなかっ たという制度設計の甘さ、「救済基 金」が設立されて10年以上一度も弁 済実績がないことによる運用経験不 足、弁済の原資が枯渇しかねないリ スクへの懸念、原資再徴収となった 場合の加盟企業の反発 などがあ る。
 細かな運用ルールも定められてい ないことから、昨年10月、弁済は破 産手続き中のジャ社の配当有無等が 決定した後とする予想外の声明を協 会が出し、大阪の被害弁護団から反 発を生じた。元加盟企業が加盟当時 に起こした販売預託商法の被害の回 復を現実にできていない以上、「救 済基金」の機能不全を検討委で放置 する道理はない。
 ジャ社被害者による「救済基金」 の申請数は昨年3月末時点で申請書 ベース28件、契約件数ベース199 件。この数字は同10月まで大きく変 わっていなかったところ、協会が今 年1月20日をもってジャ社被害者か らの申請を締め切ると告知したこと から変動。昨年12月18日のジャ社債 権者集会で管財人は「救済基金」の 申請条件を満たすため「かなりの数 の解約通知が(管財人宛て)に来て いる」と説明しており、締切の設定や 管財人の働きで申請数を大きく増や した可能性が高い。 「救済基金」に見 直しの動きがなければ、申請者の不 満がさらに蓄積されていくばかりだ ろう。猶予はあまり残されていない。