動き始めた新ブランド戦略

 1面で報じているように、ダイレ クトセリング化粧品のエフエムジー &ミッション(旧エイボン・プロダ クツ)が、主力スキンケアブランド 「ミッション」の大幅な刷新を実施 した。刷新と言っても、既存ライン を入れ替えるのではなく、高価格ラ インの投入なのだが、新規4ブラン ド(1ブランドは昨年10月に発売) を一斉に投入するというケースは極 めて稀と言える。そこには、ブラン ドイメージの強化と、ビジネスモデ ルの変革という狙いが あるようだ。
 周知の通り、同社の前身であるエ イボンは、100年以上前に米国で 誕生した化粧品ブランド。昨年、日 本上陸50周年を迎えたタイミング で、エイボンから現在の社名に改め、 〝次の50年〟に向けた施策をスター トさせた。まず、商品政策のあり方 を見直し、親会社のLG生活健康の 研究開発体制と、エイボン時代から 得意としてきた「発酵」を応用した スキンケアブランドとして、「ミッ ション スムマ」をはじめ4ブラン ドを 相次いで発売した。いずれも、 既存のミッションシリーズよりも高 価格帯に位置していることから、エ イボン時代に比べて「美容に高い関 心をもつコアユーザー」をターゲッ トとした戦略を強化したことが分か る。
 化粧品市場では、コストパフォー マンス重視の低価格ラインと、高機 能・高付加価値型の高価格ラインの 二極化が進んでいる。化粧品は多く の女性にとって生活必需品と言える 存在だが、化粧品に費やすコストは 千差万別。市場全体では、ドラッグ ストアルートでオールインワンタ イ プが人気であることを踏まえれば、 大半の女性は、 〝そこそこの機能性〟 と価格を重視しているわけだ。
 翻って、ダイレクトセリング化粧 品の価格帯は、市場全体では高価格 に位置づけられる。旧エイボンの主 要アイテムは、DS化粧品の中では 購入しやすい価格帯だったが、セル ム市場のアイテムと比べれば十分高 価格だ。今回、エフエムジーが高価 格ラインを一斉投入したのは、もと もとコアマーケットであるダイレク トセリング市場において、さらなる コア層の〝深堀り〟を進める狙いが あると言える。社名変更は、新施策 やブランドイメージの刷新には ふさ わしいタイミングだろう。
 その一方で、課題もある。もとも とエイボンブランドは、カタログ頒 布で購入しやすい価格帯が特徴だっ た。それは、ハイブランドをメーン とする他の化粧品企業とは異なる層 の支持を長年にわたって集めてきた ということに他ならない。そのよう な層が、高価格ラインにどう反応す るのか、様子を見る必要があるだろ う。ハイブランドをメーンとするD S企業では、サロンのような拠点で の対面販売をメーンとしつつ、百貨 店、異業種とのコラボイベントなど、 多様な接点をもつことによって、D Sチャネル以外でもブランド訴求を 行っている。現状、エフエムジーで はメンバーによるカタログ頒布を中 心に、一部でECや店販も実施して いるが、新しいブランドイメージを キャッチする接点が不足していると 言えるのではなかろうか。新ブラン ド戦略がどう動いていくのか、注目 され る。