特商法・預託法検討委 消費者庁は執行上の問題点示せ

  消費者庁は、悪質な販売預託商法 に対する規制の強化に重い腰をあ げ、2月18日に第1回「特商法及び預 託法の制度の在り方に関する検討委 員会(以下「特商法・預託法検討委」)」 を開催した。同庁は同商法に対する 規制強化について、昨年8月ごろま で渋っていた。消費者委員会との意 見交換の場でも、 「現行法に基づく執 行強化と体制整備が第一 に必要」な どとしていた。それが一転して姿勢 を変えたのは、消費者行政を取り巻 く趨勢に抗しきれなくなったからと 考えられる。消費者行政の司令塔(先 導)機能の後退感が否めない。
 しかも今回、消費者庁が同検討委 に「御議論戴きたい事項」として提 示したのは大きく2つのテーマだ。 1つ目は「消費者の脆弱性につけ込 む悪質商法への対策強化」であり、 2つ目は「経済のデジタル化・国際 化に 対応したルール整備」である。
 本命である筈の販売預託商法対策 は、1つ目のテーマの論点の1つと して、「①悪質ないわゆる『販売預 託商法』に対する実効性のある対策」 として取り上げられている。この他 に「②消費者の脆弱性を狙った悪質 商法への法執行の強化・迅速化」、 「③被害救済の抜本的強化」が取り上 げられている。しかし、 「消費者の脆 弱性につけ込む」行為 への規律の在 り方については、別途検討が進めら れている「消費者契約に関する検討 会」のメイン・テーマである。又、2つ 目のテーマも「デジタルプラットフ ォーム企業が介在する消費者取引に おける環境整備に関する検討会」等 で検討されている。大風呂敷を広げ た観が否めない。一方、 この特商法・ 預託法検討委は、今夏を目途に一定 の結論を得るとされている。このタ イムスケジュールの中で、これら全 ての論点に結論を得ることはできる のか。他の色々な検討会の進行状況 から見ても、とうてい無理というも のであろう(当日の委員の間からも そういう声が聞かれた)。無理なスケ ジュールで議事の進行を求める消費 者庁の意図は不可解と言わざるを得 ない。各委員の4分間スピーチでも その内容は、悪質販売預託商法を念 頭に置いたものが圧倒的に多かっ た。従って、同検討会においては、 「販 売預託商法に対する実効性のある対 策」の一本に絞って集中審議を行い、 実効性のある施策をまとめるのが筋 というものであろう。
 第1回の検討会で配布された資料 に、当該問題事業者に対する数次の 行政処分の内容(その都度公表され た ニュースリリース)が含まれてい た。しかし、これら事業者に対して 法を執行するに際して、どのような ことが障害になったのかという事実 についての資料は無かった。本来で あれば、処分に至った経緯、つまり ①問題把握の端緒(苦情相談)、② それに基づく行政指導とその効果、 ③報告徴収・立入検査、④処分の発 動、⑤処分に対する異議申立の有無 等について時系列で示し、これらの 経緯の中で明らかになった現行法の 限界を示すべきであった。特に、事 業者サイドの委員は、これらの資料 がなければ、当該事業者の特質をは じめ、現行法の何処に問題があるの か理解するのが困難と考えられる。 このような状況で委員に検討を求め る姿勢には疑問符が付く。