販売組織の団結力を活かせ

 ダイレクトセリング化粧品分 野は、この20年間で業態が大き く変容した。ドア・ツー・ドア のような訪販スタイルは、それ 以前から社会情勢の変化を背景 に減少傾向にあったが、業態変 革に拍車をかけたのは、最大手 ポーラの大規模なサロン戦略で あったことは周知の通りだ。消 費者の価値観や生活スタイルの 変化を背景に、多くの化粧品企 業がサロンやそれに類する拠点 を設け、顧客にカウンセリング やお手入れ、そして商品を販売 する拠点として活用している。 事業の「見える化」によって、 旧来の訪販イメージを払拭し、 新しい時代のビジネスモデルと して定着した感があるサロン展 開だが、だからといって、販売 員が直接顧客に商品を届ける無 店舗スタイルの需要が全くなく なったかと言えば、そうではな い。
 それを改めて気づかせてくれ たのは、奇しくも新型コロナウ イルスによる感染拡大だ。本紙 1面で報じているように、各社 が展開するサロンや拠点も地域 の状況に合わせて営業時間を短 縮したり、臨時休業を余儀なく されるケースが増えてきてい る。災厄そのものと言える感染 拡大がいち早く収束するのを祈 るばかりだが、それには国民一 人ひとりが、不要不急の外出を 控えるといった防衛意識が不可 欠であろう。そのような状況下 で、できるだけ人に合わずに商 品を購入できる販売チャネルの ニーズが高まっているという。 宅配や置き薬などがそれに当た るが、ダイレクトセリングとい うビジネスも、販売員が直接商 品を届けてくれる販売チャネル だ。
 サロンを臨時休業し店舗での 施術が出来なくとも、化粧品企 業の本業である物販は可能なこ ともある。実際に、施術は中止 した が販売は継続しているサロ ンもあるようだ。このご時世、 不特定多数が出入りする店舗で の購入や、知り合いではない宅 配スタッフが荷物を届けること に不安を覚える人は少なからず いる。翻って、このビジネスで は、販売員と顧客(愛用者)は 知り合いであることが多く、気 心が知れている。直接の手渡し に不安があるのなら、自宅前で 〝置き配〟も可能だ。顧客一人 ひとりのニーズに合わせて柔軟 に対応できるのは、カウンセリ ング販売ならではの強みと言え るだろう。
 9年前の東日本大震災や原発 事故の時もそうだったが、非常 時には人と人のつながり、絆の ありがたさを痛感するものだ。 「目に見えない不安」は、その 当時もあったが、今回は世界的 規模、かつ想像を超えた早さで 被害が広がっている。重要なイ ベントやセミナーが軒並み延期 になり、販売組織の士気低下も 懸念されている。しかし、この ような時こそ、販売組織の団結 力の強さを活かして乗り切りた いものだ。