コロナとの共生 事業のさらなる複合化こそ

 〝コロナ禍〟によって停滞し ていた社会経済活動が、徐々に 動き始めた。ダイレクトセリン グ(DS)業界はこの年の間、 リーマンショックや東日本大震 災をはじめ、さまざまな災害や 危機に晒されてきた。消費者の 価値観は、社会の激変に応じて 変容し、ダイレクトセリング各 社もそれを受けて多様化するニ ーズに対応してきた。新型コロ ナウイルスに伴う騒動は、世界 的なパラダイムシフトをもたら すものだ。さまざまな荒波に晒 されながらも生き抜いてきたD S業界もまた、社会の変化に応 じて柔軟な変化が求められてい る。
 DS化粧品市場では、この 年の間で、従来型訪販からサロ ンなどの店舗を拠点としたビジ ネスモデルへシフトした。消費 者から「事業が見えづらい」と されてきた訪問販売から、誰で も来店できる拠点でカウンセリ ング販売を行うことで、ビジネ スの「見える化」が進み、透明 性が確保された。販売員を中心 とした愛用者の輪というクロー ズドマーケットが事業規模の核 であることに変わりはないが、 ネットを活用したPRや商業施 設でのイベント、異業種とのコ ラボレーションなど、ブランド 訴求の幅が広がったことで、新 規顧客との接点が多様化したこ とは確かであろう。近年は、サ ロン展開にも各社の独自性がみ られ、顧客のニーズに合わせた 商品やエステメニューが提供さ れていた。
 従来型訪販に代わるビジネス モデルとして浸透したサロン展 開だが、〝コロナ禍〟によって 人との接触がリスクとなる事態 となり、思わぬ弱点が浮き彫り になったと言える。尤も、これ は サロンに限らずリアルで店舗 をもち、顧客と接触する事業形 態すべてに該当するものだ。サ ロンは1~2カ月近く臨時休業 を余儀なくされたが、緊急事態 宣言の全面解除を受けて、徐々 に営業を再開している。
 他方で、DS系サロンは一般 的なエステティックサロンと異 なり、もともと販売員と顧客の 関係性が土台にあり、お手入れ やカウンセリングを行う拠点と して活用されることが多い。こ のため、既存顧客のフォローに ついては、サロンが営業できな くても継続することができた。 施術は難しくても、化粧品など は直接顧客に直接届けたり、接 触機会を減らすために「置き配」 で対処するなど、顧客の細かな 要望に応じることが可能である ことが分かった。ダイレクトセ リングをベースとしたサロン展 開という複合的な事業形態が、 〝コロナ禍〟のような事態にお いて有効に機能したと言えるだ ろう。
 〝コロナ共生〟下では、オン ラインの活用など、事業のさら なる複合化が求められる。特に、 新規顧客へのアプローチをどの ように進めるか、早急な策定が 不可欠だ。