販売預託商法規制 今こそ不作為疑惑の総括を

 破たんしたジャパンライフな ど〝販売預託商法〟の規制を検 討していた消費者庁の「特定商 取引法及び預託法の制度の在り 方に関する検討委員会」が、5 月19日の会合において販売預託 取引を原則禁止とする方向で合 意した(6月4日号4面)。大 きな前進であることは間違いな い一方、ジャ社への天下り問題 に象徴される一連の不作為疑惑 は何ら、解明されていない。放 置したままでは再び問題商法を 蔓延らせかねず、今こそ総括が 必要だ。
 過去の会合では参入規制案が 優勢。それより大幅に厳しい原 則禁止へ舵を切った背景には、 対象業者が40社程度と少なく、 そのほとんどが悪質と見られた ことがある。それだけに今後の 制度設計では、網の目を細かく して逃さないことが重要。原則 禁止を方向づけた河上正二委員 長は「(例外は)限りなくゼロ に」「合理的な内容と説明でき ないものは全てアウト」と言明。 事務局もこれに足並みを揃える 考えを示しており7月の原案公 表が待たれる。
 一方、ここに至るまでの過程 を振り返ると、甚大な被害を事 実上放置し続けたとしか考えら れない消費者庁の怠慢は、その 責任を棚上げされたままだ。  さかのぼれば、販売預託商法 の破たん劇はジャ社に限らず枚 挙にいとまがない。11年の「安 愚楽牧場」、07年の「近未来通 信」、01年の「八葉物流」など、 被害が出る度に預託法の強化等 が叫ばれてきた。が、09年に設 置された消費者庁は、安愚楽事 件を受けても小手先の預託法の 政省令改正でお茶を濁し、その 後 、同事件の被害者から国家賠 償請求訴訟を起こされている。
 さらに、ジャ社を行政指導し た取引対策課の課長補佐が同社 に天下った問題は、職員に処分 企業への再就職自粛を求める対 処に留まった。昨年の臨時国会 では、内閣府や経産省のOBな どもジャ社へ天下っていたこと を念頭に「本件の特異性」を理 由として、14年春に予定された ジャ社への立ち入り検査が見送 られ、15年9月の検査着手まで 被害の拡大をみすみす許したこ とも明らかになった。
 昨年8月の段階で消費者庁 は、販売預託商法被害の主因は 虚偽説明等をともなう訪販、連 鎖販売で違法収益をあげること にあると主張。商品等の実在し ない取引で元本保証を謳い、集 めた資金を別の出資者への配当 に回す一連のスキームに問題が あるのに、本質から目をそらし、 訪販と連鎖をスケープゴートに しようとしていた。
 なぜ、ジャ社の立ち入り検査 を避け、初期の処分も手ぬるい ものだったのか。無理筋のロジ ックで同商法の規制に逃げ腰だ ったのか。これら不作為疑惑へ の説明を果たさないまま、臭い ものに蓋とばかり原則禁止を制 度化しても、真の被害防止には 結びつかないのではないか。