訪販協の救済基金 現況、ありのまま開示を

  元会員の「ジャパンライフ」 が破たんし、返金を受けられな い顧客から利用申請が相次ぐ日 本訪問販売協会の「訪問販売消 費者救済基金」。前号1面で伝 えた通り、昨年の協会の告知を きっかけに、利用を申請するた め多数の顧客が破産管財人に解 約を申し込み、これを根拠に管 財人が消費税還付を申告。絶望 的だった配当の余地が出てき た。一方、「救済基金」からの 給付の見通しは今も不透明なま ま。それどころか申請状況さえ 公表されていない。
 協会の2018年度の事業報 告書は、昨年3月末時点の「救 済基金」申請数を申請書ベース で28件、契約件数ベースで19 9件と記載。この数字は、昨年 10月、協会がジャ社顧客向けに 「救済基金」の件を告知した段 階でもほぼ変わらなかった。
 その後、告知をきっかけとし て「救済基金」の利用を目的と したレンタルオーナー契約解除 の申し込みが管財人へ殺到。人 数は約750人で、そのほとん どが実際に「救済基金」の利用 を申請したと見られる。したが って、現在の申請件数は昨年よ り大幅に増えた可能性が高い。
 が、協会が6月19日の通常総 会で承認を受けた19年度の事業 報告書は、申請件数に触れてお らず、現在の申請状況ははっき りしない。
 協会事務局によれば、昨年10 月の告知以前に寄せられた申請 の書類は、各地のジャ社被害弁 護団が代行したものが多く、内 容が分かりやすかったという。 対して、告知の後に相次いだ申 請は「慌てて出された」と思し き書類が少なくなく、「中身を 見るのに相当時間がかかってい る」という。
 整理の遅れを理由に、「救済 基金」の給付の可否等を判断す る「消費者救済に係る審査委員 会」 も、昨年10月を最後に開か れておらず、今のところ、10月 の理事会までに申請状況をまと めたいとする。
 しかし、18年度報告書で申請 書ベースの件数に触れているよ うに、概算の数字さえ公表しな いことには疑問符が付く。昨年 の数字とほぼ変わらないならと もかく、数百人単位の申請が殺 到して大きく変動したと見られ る以上、その背景も含めて報告 されてしかるべきだろう。年 度報告書では、昨年10月の告知 の件には触れているものの、そ の後の動きについては何も触れ ていない。また、20年度の事業 計画書においても、 「救済基金」 の申請処理の目途や給付の見通 しに関する説明はない。
 6月の総会の参加者によれ ば、「救済基金」の申請状況に ついて説明を求める意見が出さ れ、事務局がこれに応じる場面 が見られたという。が、「救済 基金」は特商法にも定められた 協会の重要事業であり、ジャ社 問題で注目度も高まっていると ころ。わざわざ問われる前に、 ありのままを報告すべきだ。