MLMの経営統合 パラダイムシフト起こせるか

 米ニューエイジの傘下となっ たモリンダ、アリックス、ゼン ノアにMLM業界が関心を寄せ ている。3社が独立運営を維持 しつつ、将来的な経営統合を視 野に入れる旨を明らかにしたか らだ(8月27日号3面詳報)。 業界の歴史を振り返れば、数多 くの買収や吸収合併が行われて きた。が、複数の企業が対等に 近い立場で統合を果たした事例 は少なく、それが成功した事例 はさらに限られる。
 同一資本の下で複数のMLM が共存する関係は、ネイチャー ズサンシャイン傘下のシナジー のように珍しいものではない。 昨年、かつての世界最大手であ るエイボンが伯ナチュラコスメ ティクスの傘下に入ったよう に、MLMを含むダイレクトセ リング業界が大きな再編の波に もまれる中では、似たような事 例が今後も出てきておかしくな いと考えられる。
 が、そのまま独立運営を続け るのではなく、経営統合となる と話は変わってくる。いずれか の会社のリーダー、プラン、製 品、スタッフが主導される形と なりやすく、立場的に弱い会社 は現場を含めて不満を抱えやす くなる。これは業界の歴史が証 明していることだ。
 例えば、経営統合の代表例と して、今も業界関係者の間で話 題にのぼるエンリッチとレクソ ール。01年の統合時、その総売 上は日本だけで推定二百数十億 円に達し、新勢力の誕生として 騒がれた。しかしその後は、会 員間の軋轢等を収拾できず、急 激に売上を落とした。
 また、2010年代の米国で は、経営改善を要するDS企業 を数多く買収し、コングロマリ ット化を手掛けていたJRJR ネットワークス(旧CVSL) の破たんといった事例も見られ た。複数ブランドの展開におい ても 困難はつきまとう。
 ただ、過去の事例を反面教師 として同じ轍を踏まないように することも可能なはず。3社の トップはいずれもフィールドの 意見を重要視する考えを表明し ている。経営統合の期限を設け ず、納得ゆくまで話し合いを続 けるなどのやり方を取ること で、統合による成長への道筋が 見えてきてもおかしくない。
 社内に関しては、ゼンノア創 業者で日本法人社長のジョセフ ワズワース氏が中心となり、チ ーム経営に乗り出す方針を示し ている。3社のトップ、スタッ フと知己の関係にあるワズワー ス氏がまとめ役を果たせるかど うかがカギとなる。
 また今は、コロナ問題という 世界史レベルの変動が起きてい る最中。新たに傘下入りした2 社のトップは、8月6日の合同 会見でコロナ問題が傘下入りの 判断に及ぼした影響に触れなか ったが、コロナ下における成長 継続をかけて統合が選択肢に入 ること自体は不思議でない。
 経営統合の定説を覆せるか、 注目が集まる。