弁明機会付与、反論は事実上困難

 特定商取引法違反で業務停止 命令を受けた連鎖販売取引事業 者の「リゾネット」が処分取り 消しを求めて争った行政訴訟 が、請求棄却を言い渡した6月 の高裁判決で決着した(9月3 日号1面、同10日号3面既報)。 この訴訟で改めてはっきりした のが、処分に先立ち行われる 「弁明機会の付与」における事 業者サイドの分の悪さ。反論の ため、指摘された違法行為を調 査しようとしても、消費者保護 の観点から個人情報が伏せられ る現状に変化の様子はない。
 リ社は処分不当を訴える根拠 の一つに、弁明機会の付与にお ける行政手続法違反を主張。会 員が行ったとされた不実告知等 に関し、勧誘された消費者の氏 名や勧誘日時、場所等の情報が 開示されず、事実関係が確認で きなかったと反論した。
 しかし、地裁は「かなりの確 度をもって(中略)特定するこ とが可能」として主張を退けた。 高裁も地裁の判断を支持。さら に補足説明で、「対象事業者か らの返礼等を恐れる消費者の、 自己のプライバシーや調査に応 じたことを対象事業者に知られ たくないとの要望を尊重する必 要もある」「調査への協力を確 保し、ひいては適正妥当な行政 処分を行う国民一般の利益の確 保につながる」「告知すべき処 分原因事実の全部または一部を 匿名化することが許される場合 もある」と、個人情報を伏せた 処分庁の措置を是認した。
 事業者の「返礼」を恐れる消 費者の心理は容易に想像できる 一方、これを理由にした情報の 不開示は、事業者の反論の機会 を制限する。事業者サイドの形 勢の不利は明らかだが、消費者 利益 が優先されると判断した。
 類似の行政訴訟においても、 弁明機会の付与における一部情 報の不開示は支持する判断が出 ている。したがって、今回の訴 訟も過去の判例に沿っただけ、 とは言える。が、事業者にすれ ば、 「〇年△月頃」 「□□地方」 といった情報のみを手掛かりに 2週間程度で事実関係を調べ、 反論にまとめあげる作業を求め られるわけで、理不尽感を覚え てもおかしくはない。
 また、リ社は提訴から4カ月 後、全ての違反事例について消 費者とその勧誘者を特定し、勧 誘者から契約締結までの状況を 聞き取って、反論の追加準備書 面を提出している。指摘された 違反行為の事実関係を調査する 過程で、結局は消費者の特定に 至るならば、個人情報を伏せる 意味がどこまであるのかとも考 えざるを得ない。
 ただ、このような分の悪さが 再考される兆しは窺えず、行政 サイドに〝悪質業者の排除〟と いう旗印がある以上、事業者サ イドの主張が功を奏す場面は非 常に限られて来ざるを得ない。 ありきたりな結論となるが、消 費者トラブルを芽の段階で摘 み、処分のきっかけを作らない 取り組みに専念する以外ない。