急激な社会変化への対応こそ

 「販売員の世代交代」は、老 舗ダイレクトセリング企業に共 通する長年の課題と言える。こ れまで、社会情勢の変化や女性 の社会進出、働き方の多様化、 売り手市場の雇用環境などを背 景に新規販売員(特に若手)の 獲得が難しい環境が続いてき た。年初から続く新型コロナウ イルスの感染拡大は、世界中の 社会経済活動に変化をもたらし ているが、ダイレクトセリング 業界においても、さまざまな変 化がみられる。
 7月に創立40周年を迎えたワ ミレスコスメティックスは、サ ロンビジネスの先駆けとして堅 実な地位を築いてきた化粧品企 業。同社も老舗の1社に数えら れるが、ベテラン販売員から若 手まで幅広い世代が活動してい るのが特徴だ。こだわりのある 化粧品開発とともに、世代の偏 りのない販売組織が強みで、祖 母、母、娘と3世代にわたって ワミレスブランドを愛用してい る家族も少なくないという。こ のため、「販売員の世代交代」 に関しては、業界全般と比較し てもスムーズに行われていると 言える。経営体制についても、 40周年という節目を迎えて「次 の担い手」への継承を見据えた 人事を実施しており、新しい時 代へステージが進んでいくこと を予感させる。
 コロナ禍によって、サロンビ ジネスのあり方も変容した。緊 急事態宣言前後は多くのサロン で臨時休業を余儀なくされた が、現在はさまざまな感染防止 対策を行いながら営業が続けら れている。事前カウンセリング など、オンラインでも対応可能 な内容については、非接触型に 切り替えて対応するケースもみ られ、〝ニューノーマル〟に合 わせた運営方法が浸透しつつあ る。コロナ禍前とは異なるスタ イルであっても、サロンが対面 販売 の核であることには変わり がないと言える。
 ワミレスが世代の偏りなく販 売員・愛用者を獲得している背 景には、やはりサロンの存在が 大きい。サロンという拠点があ り、自分の母が熱心に活動する 姿を身近で見てきた子どもが、 「自分もやってみたい」と思う ようになるのは自然な流れだ。 一部の老舗企業では、販売員の 世代交代が進む動きがみられる が、ワミレスにおいても母から 娘へと継承が徐々に行われてい る。地位の継承では、世代間の ギャップや営業力の差など、継 承した側が頭を悩ませる場合が あるが、ワミレスでは、世代の 偏りが少なくバランス良く販売 員が分布しているため、若い世 代の販売員もスムーズに活動し やすい環境となっている。デジ タル・アナログ双方を活用した 教育制度も若手の活動を支えて いるようだ。
 コロナ禍によって、本来なら 10年単位の変化が1年で進んだ とされている。世代交代を含め、 急激に変化する社会情勢への対 応が急務だ。