ジャ社事件 逃げ切り狙う消費者庁

  9月18日、レンタルオーナー 商法で2000億円超の被害を 生んだ「ジャパンライフ」の首 謀者14人が詐欺容疑で一斉逮捕 された。法の裁きが迅速、適正 に行われることが期待される。 一方、一連の事件の責任はジャ 社だけに問うて済む話ではな い。その筆頭が消費者庁。ジャ 社の指導を担当した取引対策課 課長補佐の〝天下り〟に始まり、 政権への〝忖度〟で立入検査の タイミングを遅らせていた疑惑 まで浮上したにも拘わらず、今 も検証と開示を拒む。消費者行 政の司令塔としての役割を自ら 揺るがす態度は許されない。
 ジャ社が17年末に破たんする まで消費者庁は特商法と預託法 で4度の行政処分を敢行。しか しこの間、ジャ社は手を変え品 を変え、最後の荒稼ぎとばかり に資金集めを続け、被害は拡大 を続けた。処分が狙った効果を あげなかったことは明白だ。
 が、消費者庁の伊藤明子長官 は昨年12月の定例会見で、4度 の処分を「一生懸命やった」と 自画自賛。呆れるほかない〝見 識〟を示した。
 会見の前には、臨時国会にお いて、15年9月に行われた立入 検査が本来はその1年以上も前 に検討されていたのに、当時着 任した取引対策課長のもとで見 送られ、行政指導にとどめられ ていた経緯が判明した。さらに、 その指導を担当した課長補佐は ジャ社に天下り、高齢者から騙 し取った資金で高給を得てい た。言語道断の話に、責任を露 も感じさせないコメントを出し たことになる。
 では、首謀者逮捕に至った現 在はどうかというと、その姿勢 に変化は見られない。
 逮捕から5日後の9月23日。 天 下り問題と立入検査時期の遅 れが処分内容や被害状況に与え た影響について聞いた本紙に、 伊藤長官は「元職員の再就職が 行政処分の時期や内容に影響を 与えたのではないかというお話 ですが、私どもが調べた限りに おいては、そういった事実はご ざいません」「そうしたことに よって、元職員が再就職したか ら結果的に遅くなったという事 実はございません」と返答。こ れら問題の再調査を行う考えに ついても「そういったことは考 えておりません」と述べた。同 庁の汚点から今も目をそらし続 けている。
 ジャ社は、元会長に送られた 政府の「桜を見る会」招待状を オーナー商法の信用固めに利 用。この調査と説明を政府はま ともに行っていない。消費者庁 以外の官庁OBや大手メディア OBがジャ社やその関連組織の ポストに収まり、甘い汁を吸っ てもきた。社会全体を巻き込む 一大事件に発展したと言って過 言でないだろう。そして、消費 者庁の怠慢と不作為が被害拡大 を助長した疑惑がくすぶり続け ている。これを検証せずに事件 は終わらない。逃げ切りは許さ れない。